HEALTH WORDS / 用語解説
多動
多動とは、年齢や発達の水準に見合わない過剰な身体的活動性が見られる状態を指す。1 医学的な文脈においては、単に活発であるということにとどまらず、状況や社会的な文脈に適さない行動が持続的に認められるのが特徴である。2
多動は、注意欠如・多動症(ADHD)の主要な構成要素の一つとして広く知られている。1 注意欠如・多動症(ADHD)は発達障害に含まれる疾患であり、その臨床的特徴は不注意、多動性、および衝動性の3つの側面によって定義される。2 このうち多動性の症状を示す人は、じっと座っていることが求められる状況であっても、手足をそわそわと動かしたり、座席から離れて歩き回ったりする行動を頻繁に起こす。1 また、絶えず何かに突き動かされているかのように行動し、過剰にしゃべるといった特徴が観察されることもある。2
これらの症状は小児期から顕在化することが多く、家庭生活や学校での学習、友人関係などの社会生活全般において様々な困難を引き起こす要因となる。1 小児期に認められた多動などの症状は、成長や発達の過程とともに形を変えながら成人期以降まで持続する場合もある。2 成人期における多動は、身体を激しく動かすことよりも、内面的な落ち着きのなさや、絶えず活動していないと気がすまないといった主観的な感覚として表れることが多い。1
多動の背景には、脳機能の障害、特に前頭葉を中心とした神経回路の発達や機能的偏りが深く関与していると考えられている。2 特に脳内の神経伝達物質であるドパミンやノルアドレナリンの代謝や受容の仕組みに何らかの偏りがあることが、行動の抑制機能を低下させ、結果として多動を引き起こす主要な要因の一つとして推測されている。1
多動に対する支援や治療アプローチとしては、心理教育や行動療法などの心理社会的治療が中心となる。1 行動療法では、本人の行動特性を周囲が正しく理解した上で、適切な環境調整を行い、望ましい行動を強化していく手法が用いられる。2 また、必要に応じて薬物療法が選択されることもあり、中枢神経刺激薬などの薬剤を用いて脳内の神経伝達物質のバランスを調整することで、症状の軽減を図ることがある。1 多動のある個人が社会の中で適切に適応していくためには、医療機関による専門的な診断と治療だけでなく、家庭、学校、職場といった周囲の環境全体による包括的な支援体制の構築が極めて重要である。2