HEALTH WORDS / 用語解説
大菱形骨
Greater multangular bone / Trapezium
大菱形骨とは、手根骨を構成する8つの骨の一つであり、手関節の橈側かつ遠位側に位置する小さな短骨である。1 2
人間の手は、手根骨、中手骨、指骨(基節骨、中節骨、末節骨)から成り立っている。1 その中で手根骨は、近位列と遠位列のそれぞれ4つの骨によって構成されており、大菱形骨は遠位列の橈側(親指側)に位置している。2 近位列には舟状骨、月状骨、三角骨、豆状骨が並び、遠位列には大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鉤骨が位置している。1 大菱形骨は、この遠位列において小菱形骨と隣接している。2
大菱形骨の大きな特徴の一つは、母指(親指)の中手骨(第1中手骨)と関節を形成している点である。3 これにより形成される関節は母指手根中手関節(CM関節)と呼ばれ、鞍関節としての構造を持っている。3 鞍関節という特殊な関節形状により、母指は屈曲、伸展、内転、外転だけでなく、対立運動という複雑かつ高度な動きを行うことが可能となっている。1 この対立運動は、人間が物を握る、つまむといった微細な手の作業を行う上で極めて重要な機能である。3
また、大菱形骨は手根管の構造や手関節の靭帯付着部としても重要な役割を担っている。1 手根管の橈側の壁を形成する構成要素の一つであり、屈筋腱や正中神経が手のひら側へと走行する空間を支持している。3 さらに、大菱形骨の表面には複数の靭帯が付着しており、周囲の骨や関節包を強固に結合することで、手関節全体および母指の安定性を維持するのに寄与している。2
臨床医学の分野において、大菱形骨はいくつかの疾患や外傷の対象となることがある。3 代表的なものとして、母指CM関節症があげられる。3 これは母指の使いすぎや加齢に伴い、大菱形骨と第1中手骨の間の関節軟骨が摩耗し、骨変形や疼痛、握力の低下を引き起こす変形性関節症の一種である。4 特に更年期以降の女性に多く見られる傾向があり、物をつまむ動作や瓶の蓋を開ける動作などで強い痛みを伴うことが多い。3 また、転倒時に手をつくことなどで、大菱形骨単独あるいは周囲の骨折や脱臼が生じることもあり、正確な画像診断と適切な治療が求められる。3