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HEALTH WORDS / 用語解説

新生ポリペプチド鎖

nascent polypeptide chain

新生ポリペプチド鎖とは、リボソーム上における翻訳の過程において、合成が進行しつつある状態のポリペプチド鎖のことである。1

タンパク質の生合成において、メッセンジャーRNA(mRNA)の遺伝暗号がリボソームによって読み取られると、アミノ酸が次々とペプチド結合によって順次付加されていく。翻訳が完了して完全なタンパク質として遊離する前の、まさに作られつつある途中の段階にあるアミノ酸の鎖を指して新生ポリペプチド鎖と呼ぶ。1

通常、リボソームの小サブユニットと大サブユニットの間にはペプチド転移酵素活性を持つ領域があり、ここでアミノ酸の付加が行われる。合成された新生ポリペプチド鎖は、リボソーム大サブユニット内部に存在する細長いトンネル状の構造、すなわち新生ポリペプチド鎖exit tunnel|新生ポリペプチド鎖抜け道(exit tunnel)を通過して細胞質あるいは小胞体内へと押し出されていく。2

この抜け道を通る間、新生ポリペプチド鎖は単なる無秩序なヒモ状の構造をとっているわけではなく、その一部では局所的な二次構造の形成が開始されることもある。また、トンネルの内部空間や壁面との相互作用を通じて、翻訳の速度が調節されたり、翻訳一時停止|翻訳の一時停止(arrest)が引き起こされたりすることが知られている。2

真核生物や原核生物の細胞内において、リボソームから抜け出たばかりの新生ポリペプチド鎖は、まだ正しい立体構造(高次構造)に折り畳み|折り畳まれていない変性あるいは未成熟な状態にある。そのため、シャペロンなどのタンパク質が速やかに結合し、凝集を防ぎながら適切なフォールディング(折り畳み)を補助する重要な足場としても機能する。1

さらに、新生ポリペプチド鎖のN末端側や特定のアミノ酸配列(シグナル配列など)は、細胞内でのタンパク質の局在化や輸送を決定づける重要なアドレスとしても働く。例えば、小胞体膜上に存在するシグナル認識粒子(SRP)が新生ポリペプチド鎖のシグナル配列を認識することで、翻訳中のタンパク質ごと小胞体膜へ標的化される仕組みが成り立っている。1

参考文献・出典

  1. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201103091931327179 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
  2. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907049448135894 ↩1 ↩2