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HEALTH WORDS / 用語解説

Cxadr

Cxadrとは、コクサッキーおよびアデノウイルス受容体(Coxsackievirus and adenovirus receptor)の略称であり、エンテロウイルス属のコクサッキーウイルスB群や多くのアデノウイルスが細胞へ感染する際に初期の結合部位として利用する1回膜貫通型の細胞接着分子である。1 Cxadr遺伝子はヒトにおいては染色体21番q21.1-q22.1に位置しており、免疫グロブリンスーパーファミリーに属するタンパク質をコードしている。2

この分子はウイルス受容体としての機能だけでなく、正常な組織においては細胞間接着、特にタイトジャンクション(密着結合)や接着結合の形成と維持において極めて重要な役割を担っている。3 上皮細胞や内皮細胞のほか、心筋組織や神経系など幅広い組織に発現しており、細胞間の接着を強固に保つことで組織構造の恒常性を維持している。1

発生学的な観点からも、Cxadrは胚発生や心臓の形態形成において必須の因子であることが知られており、遺伝子改変を用いた研究では、本因子の欠損が心血管系の重大な異常を引き起こし胎児致死につながることが示されている。4 また、成体の心筋においても刺激伝導系や intercalated disc (介在板)の構造維持に関与しており、心機能の調節や不整脈の病態との関連が指摘されている。5

近年の腫瘍学および医学研究においては、Cxadrはがん治療の分野でも大きな注目を集めている。がん細胞の表面におけるCxadrの発現量は、多くの場合、悪性化の進行や脱分化に伴って変動することが知られている。6 特にアデノウイルスをベクターとして用いた遺伝子治療や腫瘍溶解性ウイルス療法において、標的細胞へのウイルスの感染効率を左右する主要な鍵となるため、Cxadrの発現を増強させることで治療効果を高める試みがなされている。7

一方で、ウイルス感染の経路としての側面からは、コクサッキーウイルスB群がCxadrを介して心筋細胞に侵入することが、ウイルス性心筋炎の発症機序の核心であると考えられている。8 ウイルスが受容体に結合すると、細胞内への取り込みが誘導され、それに伴う炎症反応や免疫応答が引き起こされて心筋組織の障害をもたらす。9

このように、Cxadrは基礎生物学における細胞接着およびシグナル伝達のメカニズムの解明だけでなく、ウイルス学、心臓病学、腫瘍免疫学などの多様な臨床医学の領域において、診断や治療法開発の重要な標的分子として研究が続けられている。1

参考文献・出典

  1. National Center for Biotechnology Information: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/1525 ↩1 ↩2 ↩3
  2. Ensembl: https://www.ensembl.org/Homo_sapiens/Gene/Summary?g=ENSG00000153813 ↩
  3. National Library of Medicine: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11925426/ ↩
  4. National Library of Medicine: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12837746/ ↩
  5. National Library of Medicine: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19124484/ ↩
  6. National Library of Medicine: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17036341/ ↩
  7. National Library of Medicine: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18311652/ ↩
  8. National Library of Medicine: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10766468/ ↩
  9. National Library of Medicine: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15723701/ ↩