HEALTH WORDS / 用語解説
HPV10
HPV10とは、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の遺伝子型の一つであり、主に皮膚の良性病変である尋常性疣贅(いわゆるイボ)などの皮膚疾患から検出されるウイルスである1。ヒト乳頭腫ウイルスはパポバウイルス科に属する二本鎖DNAウイルスであり、粘膜や皮膚の上皮細胞に感染する特徴を持っている2。
HPVには非常に多くの遺伝子型が存在し、それぞれが異なる病原性や臨床的特徴を示す。HPV10は、系統的にはアルファ・パピローマウイルス属に分類されることがあり、主として皮膚の良性腫瘍である尋常性疣贅や扁平疣贅などの疣贅に関連する型として知られている3。皮膚の感染症としてのHPVは、免疫機能が正常な宿主においては自然治癒することもあるが、難治性のイボとして長期間残存する場合もある。
ヒト乳頭腫ウイルスの感染経路としては、皮膚や粘膜の微小な傷を介した接触感染が一般的である。HPV10を含む皮膚指向性のHPVは、プールやジムの床などの環境を介した間接的な接触によっても伝播することがあると考えられている。感染した細胞内では、ウイルスのDNAが宿主細胞の増殖を利用して複製され、表皮の角化異常や肥厚を引き起こすことで臨床的なイボが形成される。
臨床診断においては、皮膚科領域において視診やダーモスコピー検査が行われるほか、病変の組織診や遺伝子検査(PCR法など)を用いることで、HPV10を含む具体的な遺伝子型を特定することが可能である4。ただし、日常的な臨床現場の治療においては、多くの尋常性疣贅や扁平疣贅は型を特定せずに対症療法が行われることが多く、液体窒素を用いた冷凍凝固療法や外用薬の塗布などが選択される。
HPV10は、子宮頸がんなどの悪性腫瘍を引き起こすハイリスク型(高危険型)のHPV(例えばHPV16型やHPV18型など)とは異なり、一般的には良性の皮膚疾患に関連するローリスク型(低危険型)に位置づけられることが多い5。しかし、免疫不全状態にある患者や臓器移植を受けた患者などにおいては、通常は良性とされる皮膚型HPVの感染が持続し、多彩な皮膚病変を引き起こすリスクが高まることが知られている。
予防の観点からは、皮膚のバリア機能を保つことや、感染部位との直接的な接触を避けることが重要である。現在広く普及しているHPVワクチン(2価ワクチン、4価ワクチン、9価ワクチンなど)は、主に子宮頸がんの主要な原因となるハイリスク型を標的としており、HPV10のような皮膚病変に関連する型に対しては直接的な予防効果を持たない場合が多い6。そのため、皮膚型のHPVに対する研究や対策は、ワクチン以外の治療法や免疫学的なアプローチを中心に進められている。
参考文献・出典
- 国立感染症研究所: https://idsc.niid.go.jp/iasr/24/283/dj2833.html ↩
- 国立医薬品食品衛生研究所: https://www.nihs.go.jp/DSIC/iarc/iarc90/vol90-1.html ↩
- National Center for Biotechnology Information: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3801452/ ↩
- 日本皮膚科学会: https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/1271_295-329.pdf ↩
- 国立がん研究センター: https://ganjoho.jp/public/prevention/screening/hpv_test.html ↩
- 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/hpv-qa/index.html ↩