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HEALTH WORDS / 用語解説

S100A8

S100 calcium-binding protein A8

S100A8とは、カルシウム結合タンパク質であるS100ファミリーに属する分子量約11kDaの低分子タンパク質であり、主に好中球や単球などの骨髄系細胞の細胞質に豊富に存在する分子である。1

S100A8は単独で機能するだけでなく、同じくS100ファミリーに属するS100A9と非共有結合的にヘテロダイマーを形成し、カルプロテクチン(Calprotectin)と呼ばれる複合体を構成することが知られている。2

生理学的および病理学的な状態において、S100A8は細胞内では細胞骨格のダイナミクスやアラキドン酸の代謝、NADPHオキシダーゼの活性化に関与し、細胞外へ分泌された場合にはダメージ関連分子パターン(DAMPs)として機能する。1

細胞外に放出されたS100A8は、受容体であるTLR4(Toll様受容体4)やRAGE(終末糖化産物受容体)に結合し、NF-κBシグナル伝達経路などを介して炎症性サイトカインの産生を誘導し、免疫応答や炎症反応を増幅させる役割を果たす。1

臨床医学の領域において、S100A8は関節リウマチ、炎症性腸疾患、敗血症などの様々な炎症性疾患や自己免疫疾患において血中や糞便中で高値を示すため、活動性のバイオマーカーとして広く利用されている。1

また、近年の腫瘍免疫学やがん研究においては、S100A8が腫瘍微小環境における免疫抑制細胞の誘導や、転移先における前転移ニッチ(Pre-metastatic niche)の形成に深く関与していることが示されており、悪性腫瘍の進展や予後予測に関連する因子としても注目を集めている。1

参考文献・出典

  1. KEGG PATHWAY: hsa05142: https://www.kegg.jp/dbget-bin/www_bget?hsa05142 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
  2. UniProt: https://www.uniprot.org/uniprotkb/P05109/entry ↩