HEALTH WORDS / 用語解説
Smad経路
Smad pathway
Smad経路とは、TGF-βスーパーファミリーに属するサイトカインが細胞膜上の受容体に結合した際、そのシグナル伝達を細胞質から核内へと直接的に仲介する主要な分子機構である。1
TGF-βスーパーファミリーには、TGF-β、BMP(骨形態形成因子)、アクチビンなどが含まれており、これらは胚発生、細胞増殖、細胞分化、アポトーシス、細胞外マトリックスの産生など、多様な生物学的主体おいて極めて重要な役割を担っている。1
このシグナル伝達系は、リガンドがI型受容体とII型受容体からなるセリン・トレオニンキナーゼ受容体複合体に結合することによって開始される。2
II型受容体のもつキナーゼ活性によってI型受容体がリン酸化されて活性化されると、活性化したI型受容体は下流のシグナル伝達分子であるR-Smad(受容体型Smad)を直接リン酸化する。2
R-SmadにはSmad2やSmad3が含まれ、これらは主にTGF-βやアクチビンからのシグナルを受け取る。1
一方で、Smad1、Smad5、Smad8といった別のR-Smadは、主にBMPからのシグナルによってリン酸化される。1
リン酸化されたR-Smadは、共通型SmadであるCo-Smad(Smad4など)と複合体を形成する。2
このSmad複合体は細胞質から核内へと移行し、さまざまな転写因子やコアクチベーター、コレプレッサーと協調して働く。2
核内に移行したSmad複合体は、標的となる遺伝子のプロモーター領域に特異的に結合し、その転写を活性化あるいは抑制することによって、細胞の運命決定や機能制御に関与する遺伝子発現プログラムを直接的に調節する。1
また、Smad経路の過剰な活性化や機能異常は、線維化疾患やがんの進展、免疫疾患など、さまざまなヒトの疾患の病態形成に関与していることが明らかにされている。1