ホーム複合体

HEALTH WORDS / 用語解説

複合体

Complex

複合体とは、複数の分子、原子、または細胞などの構成要素が、非共有結合あるいは共有結合などの相互作用によって結合し、全体として一つのまとまった機能単位を形成しているものの総称である。1 生物学や医学の分野においては、単一のタンパク質単体では発揮できない多様な高次機能を担うタンパク質複合体や、核酸とタンパク質が結合した生体高分子の集合体を指すことが多い。2

生物の細胞内では、多くの生命現象が多様な複合体の形成と離散によって精密に制御されている。 例えば、遺伝情報の転写過程においては、RNAポリメラーゼや多数の転写因子が集合して巨大な転写複合体を形成し、DNA上の特定の塩基配列を認識して遺伝子の発現を調節する。2 また、細胞質内や核内におけるタンパク質の生合成や品質管理、さらには不要となったタンパク質の分解に至るまで、数多くの分子が協調的に働く場として複合体が重要な役割を担っている。

代謝やエネルギー産生の中枢であるミトコンドリアの内膜には、電子伝達系を構成する複数の膜貫通型タンパク質複合体(複合体I、複合体II、複合体III、複合体IVなど)が存在している。1 これらの複合体は、補酵素から電子を受け取ってプロトンを膜間腔へと能動輸送し、ATP合成酵素(複合体Vとも称される)を駆動するためのプロトン濃度勾配を形成することで、生体活動に不可欠なATPを効率的に産生している。2

免疫学の領域においても、複合体は生体防御機構の中心的な存在である。 抗原と抗体が結合して形成される免疫複合体は、補体系を活性化したり、食細胞による貪食を促進したりすることで、病原体や異物の排除に寄与する。1 しかし、過剰な免疫複合体が血管壁や糸球体などの組織に沈着すると、炎症性の疾患や自己免疫疾患を引き起こす原因ともなるため、その動態は厳密に制御されている。2

このように、複合体は生体の構造的安定性を維持するだけでなく、シグナル伝達、物質代謝、遺伝子発現制御などの動的な生命機能を支える基本単位として、医学および生物学の研究において極めて重要な研究対象となっている。1

参考文献・出典

  1. 命数辞書: https://lifesciencedb.jp/db/meta/archives/28096 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
  2. ライフサイエンス辞書: https://lsd-project.jp/cgi-bin/lsdsearch?key=%E8%A4%87%E5%90%88%E4%BD%93 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4