HEALTH WORDS / 用語解説
アコニット酸ヒドラターゼ
Aconitate hydratase
アコニット酸ヒドラターゼとは、クエン酸回路(TCA回路)の構成成分であり、クエン酸からシス-アコニット酸をへてイソクエン酸への異性化反応を触媒する酵素である。1
本酵素は、一般にアコニターゼ(Aconitase)とも呼ばれており、動物から植物、微生物に至るまで広く真核生物および原核生物に存在している。2 細胞内においては、ミトコンドリアに局在してエネルギー代謝や糖代謝の中核を担うアイソザイムが存在するほか、細胞質基質にも存在して鉄のホメオスタシス調節に関与するものが知られている。2
分子構造の観点から見ると、アコニット酸ヒドラターゼは活性中心に鉄-硫黄クラスター($[4Fe-4S]$クラスター)を持つタンパク質である。3 この鉄-硫黄クラスターは酵素の触媒活性に必須であるが、酸化ストレスなどの過酷な環境下においては容易に損傷を受けやすく、鉄が遊離することで不活性化することが特徴である。2
クエン酸回路内における化学反応としては、クエン酸の脱水反応によってシス-アコニット酸を生成し、引き続く水和反応によってイソクエン酸へと変換する可逆的な過程を仲立ちしている。4 この反応は生体がATPを効率的に産生するための代謝経路において不可欠なステップであり、多くの生物の生存を維持する上で重要な基盤となっている。4
さらに、細胞質に存在するタイプのものは、鉄の細胞内濃度が低下した際にRNA結合タンパク質として機能し、鉄代謝に関連する遺伝子の発現を調節する制御因子(IRP-1:Iron regulatory protein 1)としての役割も兼ね備えている。5 このように、アコニット酸ヒドラターゼは、通常の代謝酵素としての機能だけでなく、細胞内の環境変化やストレスに応じた多様な生体応答の調節機構にも深く関わっている。5
参考文献・出典
- 生物学的科学研究科情報基盤: https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B3%E3%83%8B%E3%83%83%E3%83%88%E9%85%B8%E3%83%92%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%BC ↩
- 生物学的科学研究科情報基盤: https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B3%E3%83%8B%E3%83%83%E3%83%88%E9%85%B8%E3%83%92%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%BF%E3%83%BC%E3%82%BC ↩1 ↩2 ↩3
- 生物学的科学研究科情報基盤: https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B3%E3%83%8B%E3%83%83%E3%83%88%E9%85%B8%E3%83%92%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%BC ↩
- J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200906061141441718 ↩1 ↩2
- 生物学的科学研究科情報基盤: https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B3%E3%83%8B%E3%83%83%E3%83%88%E9%85%B8%E3%83%92%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%BF%E3%82%BC ↩1 ↩2