HEALTH WORDS / 用語解説
アモルファ-4,7-ジエン
amorphadiene
アモルファ-4,7-ジエンとは、キク科の植物であるアルテミア・アヌア(クソニンジン、Artemisia annua)において生合成される、セスキテルペンの一種である炭化水素である。1
本物質は、マラリア治療薬として広く知られるアルテミシニンの前駆体として極めて重要な化合物であり、植物体内におけるアルテミシニンの生合成経路の中間体として機能している。1
生化学的な生成過程においては、ファルネシルピロリン酸(FPP)を基質としてアモルファ-4,7-ジエンシンターゼ(amorphadiene synthase)と呼ばれる酵素による環化反応を受け、立体特異的に合成される。2
このアモルファ-4,7-ジエンシンターゼは、セスキテルペン環化酵素のファミリーに属しており、植物の二次代謝産物の多様性を生み出す上で中心的な役割を果たす酵素の一つとして詳細に解析されている。2
アルテミシニンは優れた抗マラリア薬としての高い薬理活性を有するものの、天然のクソニンジンからの抽出効率が低く、供給の不安定さが長年の課題となっていた。そのため、遺伝子組換え技術を用いた微生物発酵による効率的な生産プロセスの開発において、本物質は鍵となる化合物として注目を集めてきた。3
具体的には、大腸菌や出芽酵母などの宿主細胞にアモルファ-4,7-ジエンシンターゼの遺伝子をはじめとするメバロン酸経路関連の遺伝子群を導入し、代謝工学的な改変を行うことで、グルコースなどの安価な炭素源から大量にアモルファ-4,7-ジエンを生産する研究が精力的に進められてきた。3
こうして微生物発酵によって大量生産されたアモルファ-4,7-ジエンを出発物質とし、その後の酸化反応などの化学的・生物学的変換プロセスを経ることで、効率的にアルテミシニンおよびその誘導体を合成する基盤技術が確立されている。3
このように、アモルファ-4,7-ジエンは、単なる植物由来の天然物としての学術的な興味にとどまらず、医薬品の安定供給を実現するためのバイオテクノロジーや合成生物学の分野において、極めて実用性の高い有用物質生産のモデルケースとして位置づけられている。3
参考文献・出典
- 京都エンサイクロペディア: https://www.kegg.jp/entry/C11453 ↩1 ↩2
- UniProt: https://www.uniprot.org/uniprotkb/Q944W0/entry ↩1 ↩2
- J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrecs/74/1/74_1_2/_pdf/-char/ja ↩1 ↩2 ↩3 ↩4