ホームグレン手術

HEALTH WORDS / 用語解説

グレン手術

Glenn procedure

グレン手術とは、先天性心疾患に対する姑息手術の一つであり、上下半身からの静脈血を直接肺へ導くために行われる開心術の歴史的かつ重要な術式である。1

主に単心室症や三尖弁閉鎖症など、一つの心室しか機能しないあるいは十分な血液循環を作り出せない複雑な心奇形に対して適応される。1

この手術の根本的な目的は、心臓(特に左心系または右心系)にかかる体積負荷(容積負荷)を軽減させると同時に、肺動脈へ酸素の乏しい静脈血を効率よく送り届けることにある。2

歴史的には1958年に外科医のウィリアム・グレン(William W. Glenn)によって最初に報告された。3

当初は上大静脈を右肺動脈に直接吻合する「両方向性ではない」単純な上大静脈-肺動脈短絡術として開発されたが、時代の変遷とともに手技が改良されてきた。3

現在では、上大静脈を右肺動脈に吻合する際に肺動脈の血流を両側の肺へ分配できるように工夫された、両方向性グレン手術(Bi-directional Glenn procedure: BDG)が標準的に用いられている。2

両方向性グレン手術では、頭部や上肢などの上半身から還流してくる静脈血が、右心房を経由せずに直接肺動脈へと流れ込む血行動態を作り出す。1

これにより、上半身からの血液が直接肺でガス交換(酸素化)を行えるようになり、心臓のポンプ機能の負担が大幅に軽減される。2

通常、生後数ヶ月から小児期早期に行われることが多く、のちに行われるフォンタン手術(Fontan procedure)へと移行するための中間段階(ステージ手術)としても極めて重要な役割を担っている。1

かつて行われていた体外循環を使用しない、あるいは簡易的なシャントを用いる術式から、現代では安定した体外循環下で精密な吻合を行う手法へと進化している。3

手術の適応を決定する際には、肺血管抵抗が十分に低いことや、肺動脈の発育が良好であることなどが厳格に評価される。2

もし肺血管抵抗が高い状態や肺動脈に狭窄がある状態でグレン手術を施行すると、静脈圧が異常に上昇してしまい、術後の循環動態が破綻するリスクが高まるためである。2

術後の管理においては、中心静脈圧の上昇や酸素飽和度のモニタリングが極めて重要であり、血栓症の予防抗凝固療法や肺動静脈瘻の発生有無についての長期的な経過観察が必要とされる。1

グレン手術の成功により、患者のチアノーゼは一定程度改善され、心室の過剰な仕事量が減ることで心筋の疲弊を防ぎ、最終的なフォンタン手術到達のための体づくりが可能となる。2

参考文献・出典

  1. 難病情報センター: https://www.難病情報センター.jp/127 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
  2. 小児慢性特定疾病情報センター: https://www.shouman.jp/disease/details/03_03_018/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
  3. PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/13531649/ ↩1 ↩2 ↩3