HEALTH WORDS / 用語解説
ゲノム疫学
Genomic epidemiology
ゲノム疫学とは、ゲノム情報と疫学的手法を統合し、集団における疾患の発生パターン、原因、およびその伝播を解明する学問領域である。1
従来の疫学が主に環境要因や臨床的特徴を中心に集団を解析していたのに対し、ゲノム疫学では次世代シーケンサーなどの先端技術を用いて網羅的な遺伝子解析を行い、個人の遺伝的素因や病原体の全ゲノム配列変異が健康および疾病に与える影響を評価する。2
この分野は大きく分けて、ヒトゲノム疫学と病原体ゲノム疫学の二つの領域に大別される。
ヒトゲノム疫学においては、ゲノムワイド関連解析(GWAS)などの手法を用いて、多因子疾患(がん、糖尿病、循環器疾患など)の発症リスクに関与する遺伝子多型(SNPなど)を同定する。1 これにより、環境要因と遺伝要因の相互作用を定量的に評価することが可能となり、個人の遺伝的背景に基づいた予防医学や個別化医療の基盤情報が提供される。2
一方、病原体ゲノム疫学は、ウイルスや細菌などの微生物が持つゲノムの変異を追跡することで、感染症の伝播経路や変異株の出現動向をリアルタイムで解析する手法である。2 全ゲノムシーケンス解析を用いることで、従来の手法では識別が困難であった微細な系統の違いや薬剤耐性の獲得過程を高い解像度で特定できるため、パンデミック時における効果的な感染対策や公衆衛生上の意思決定において極めて重要な役割を果たしている。1