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HEALTH WORDS / 用語解説

疫学

Epidemiology

疫学とは、集団を対象として疾病の発生頻度や分布、およびそれに影響を与える要因を明らかにし、健康に関する課題の解決策を講じるための科学技術である。1

伝統的には人間の集団における感染症の流行(エピデミック)の原因究明や予防対策を中心に発展してきたが、現在ではがんや心血管疾患などの生活習慣病をはじめとする非感染症疾患、さらには傷害、精神保健、環境衛生、医療サービスの評価に至るまで、人間の健康と疾病に関するあらゆる事象を研究の対象としている。2

疫学の最大の特徴は、個人ではなく明確に定義された集団(集団、人口集団)を分析の単位とすることにある。臨床医学が目の前の患者の診断や治療を目的とするのに対し、疫学は集団全体の健康状態を把握し、疾病の原因を特定することで、社会全体や地域社会における予防医学的介入や公衆衛生施策の根拠を提供することを目的としている。

疫学の研究手法は、大きく観察研究と介入研究の2つに大別される。 観察研究は、研究者が自然な状態にある集団に介入せず、曝露(原因と疑われる因子への接触)と疾病の発生との関係を観察・記録する手法であり、コホート研究、症例対照研究、横断研究、生態学的研究などが含まれる。 一方、介入研究は、研究者が意図的に何らかの介入(新薬の投与や保健指導など)を行い、その効果を検証する手法であり、ランダム化比較試験(RCT)などが代表的である。

疫学の歴史において、近代的な研究手法の基礎を築いた重要な業績の一つが、19世紀中葉のロンドンにおけるジョン・スノウによるコレラの流行調査である。スノウはコレラ患者の発生場所を地図上にマッピングし、特定の給水ポンプから供給される水が感染源であることを突き止め、ポンプのハンドルを取り外すことで流行を収束させた。この業績は、環境要因と疾病の発生との関係を空間的および統計的に分析した近代疫学の原点とされている。

現代の疫学においては、疾病の発生頻度を表す指標として、有病割合(有病率)や罹患割合(罹患率)などが用いられる。 また、原因と結果の関連の強さを評価するためには、相対リスクやオッズ比などの指標が計算される。 しかし、観察研究においては、真の因果関係を歪める交絡因子(交絡)の存在や、選択バイアス、情報バイアスといったバイアスに十分注意する必要があり、得られた結果の解釈には厳密な統計的解析と批判的吟味が求められる。

今日では、分子生物学の進歩を取り入れた分子疫学や、遺伝子情報と環境要因の相互作用を解析するゲノム疫学など、新しい領域への展開も進んでいる。 さらに、得られた科学的根拠は、エビデンスに基づく医療(EBM)やエビデンスに基づく保健政策の基礎として不可欠なものとなっており、現代社会における医療・保健・福祉のあらゆる場面でその重要性が増している。

参考文献・出典

  1. 厚生労働省 e-ヘルスネット: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-058.html ↩
  2. 国立国際医療研究センター 国際医療協力局: https://kyokai.ncgm.go.jp/homelink/115/02.html ↩