HEALTH WORDS / 用語解説
トランススクリプトーム
Transcriptome
トランススクリプトームとは、ある細胞、組織、あるいは個体などの特定の生理的状態において、転写されるすべてのRNA分子の総体のことである。1
DNAにコードされている遺伝情報は、転写というプロセスを経てRNAへと合成されるが、ゲノムに存在するすべての遺伝子が常に同じように発現しているわけではない。トランススクリプトームは、時間経過や環境の変化、細胞の種類や疾患の有無などに応じて動的に変動する性質を持っている。そのため、トランススクリプトームを解析することは、個々の細胞や組織においてどの遺伝子がどの程度機能しているのかを網羅的に理解する上で極めて重要である。
トランススクリプトームの構成要素には、タンパク質へと翻訳されるメッセンジャーRNA(mRNA)だけでなく、タンパク質に翻訳されないノンコーディングRNAも含まれる。ノンコーディングRNAには、マイクロRNAやリボソームRNA、トランスファーRNAなどが含まれており、これらも遺伝子発現の調節や様々な生体機能の維持において重要な役割を担っている。
近年では、次世代シーケンサなどの網羅的解析技術の進歩により、トランススクリプトームを定量的かつ高精度に測定するRNA-Seq(RNAシークエンシング)などの手法が広く普及している。これにより、従来のマイクロアレイ法では検出が難しかった微量なRNAや新規の転写産物、スプライシング異常なども詳細に解析できるようになり、生命科学や医学の分野において基礎研究から臨床医学まで幅広く応用されている。2
参考文献・出典
- ゲノム医学: https://www.nibiohn.go.jp/eiken/chishiki/mirai/h22_10.html ↩
- NBDCバイオデータベーストピア: https://biosciencedbc.jp/about-db/glossary/rna-seq/ ↩