HEALTH WORDS / 用語解説
パピローマウイルス
Papillomavirus
パピローマウイルスとは、ヒトや動物の皮膚および粘膜の上皮組織に感染し、良性の腫瘍であるパピローマ(乳頭腫)やイボを形成する二本鎖DNAウイルスの総称である。1
パピローマウイルス科(Papillomaviridae科)に分類され、多様な属や種が存在するが、その多くは宿主特異性が高く、特定の宿主動物にのみ感染する性質を持つ。1
医学および公衆衛生の分野において特に重要なのがヒトパピローマウイルス(HPV)であり、これまでに100種類以上の遺伝子型(ゲノム型)が同定されている。2
ヒトパピローマウイルスは、その発がん性の強さによって高リスク型(高リスクHPV)と低リスク型(低リスクHPV)に大別される。3
低リスク型に分類される代表的なウイルスの型としてHPV6型やHPV11型などが挙げられ、これらは主として尖圭コンジローマなどの良性病変や皮膚のイボを引き起こす原因となる。1
一方で、高リスク型に分類されるHPV16型やHPV18型などは、子宮頸がんをはじめとする悪性腫瘍の発生に深く関与していることが明らかにされている。2
ヒトパピローマウイルスは主に性行為などの接触感染によって、皮膚や粘膜の微小な傷口から宿主の細胞内に侵入し、持続感染を成立させることが知られている。3
多くの感染は一過性のものであり、免疫応答によって自然にウイルスが排除されるが、一部の感染者において持続感染が長期化し、前がん病変を経てがん化へと進展する場合がある。2
子宮頸がんのほかにも、膣がん、外陰がん、陰茎がん、肛門がん、さらには中咽頭がんなどの頭頸部腫瘍の発生にもヒトパピローマウイルスの感染が関与していることが示されている。3
パピローマウイルスに対する予防策としては、ウイルスのL1タンパク質から構成されるウイルス様粒子(VLP)を応用したHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の接種が極めて有効な手段とされている。1
ワクチンの接種により、高リスク型のウイルスによる持続感染や前がん病変の発症を大幅に抑制することが可能であり、世界保健機関(WHO)をはじめとする公衆衛生機関によって定期接種等の予防プログラムが推奨されている。2
また、ワクチン接種と併せて、子宮頸がん検診などの定期検診を受診し、前がん病変を早期に発見・治療することが、パピローマウイルスに関連する疾患の morbidity(罹患率)および mortality(死亡率)を低下させるために重要である。3