HEALTH WORDS / 用語解説
ミエリン
Myelin
ミエリン(髄鞘)とは、脊椎動物の神経細胞の軸索を取り囲む生体膜構造であり、神経インパルスの伝導速度を飛躍的に高める絶縁体としての役割を果たす多層性の膜である。1
ミエリンは脂質が約70〜85%、タンパク質が約15〜30%という極めて高い脂質含有量を特徴とする特殊な細胞膜であり、この高い脂質比率が優れた電気的絶縁性を担保している。1
中枢神経系においてはオリゴデンドロサイト(希突起膠細胞)の細胞膜が軸索の周囲に幾重にも巻き付くことでミエリンが形成され、1個のオリゴデンドロサイトが複数の軸索に髄鞘を供給することができる。2
これに対し、末梢神経系ではシュワン細胞が単一の軸索の一部を取り囲んで髄鞘を形成しており、1つのシュワン細胞が形成するのは1つの軸索上の1つの節間ミエリン区間であるという違いが存在する。1
ミエリンを構成する主要なタンパク質には、中枢神経系において膜同士の接着や構造維持に働くミエリン塩基性タンパク質(MBP)やプロテオリピドタンパク質(PLP)、末梢神経系に特異的なP0タンパク質やPMP22などが含まれており、これらは髄鞘の正常な構築と維持に不可欠である。1
有髄神経ファイバー上において、ミエリンが一定間隔で途切れている露出部分はランビエ絞輪と呼ばれており、神経インパルスがこの絞輪間を跳躍するように伝導する跳躍伝導を行うことで、無髄神経と比較して圧倒的に高速な情報伝達が可能となっている。1
医学的および病理学的な観点において、ミエリンの破壊や脱落を引き起こす病態は脱髄疾患と呼ばれ、その代表例である多発性硬化症では自己免疫的な機序によって中枢神経系のミエリンが損傷を受け、神経症状や機能障害が引き起こされる。3
参考文献・出典
- 脳科学辞典: https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%83%9F%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%B3 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
- 厚生労働省 e-ヘルスネット: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/brain/ye-039.html ↩
- MSキャビン 多発性硬化症とは: https://www.mscabin.org/ms_what/ ↩