HEALTH WORDS / 用語解説
側頭下窩
Infratemporal fossa
側頭下窩とは、頭蓋骨の側頭部および顔面の深部に位置する、骨と筋肉に囲まれた不規則な形をした解剖学的な空間である。1
側頭下窩は頬骨弓の下方に位置し、頭蓋骨の底面である頭蓋底の外側に広がる重要な領域である。2
この空間は頭蓋の外側面にあり、頭蓋骨の頬骨、蝶形骨、側頭骨、下顎骨などの骨によってその境界が形成されている。1
側頭下窩の前方は上顎骨の後面に接し、内方は蝶形骨の翼状突起外側板に面している。2
また、外側には下顎枝の上部が存在し、上方は蝶形骨大翼の側頭下面および側頭下稜によって限られている。1
下方においては明確な骨による境界がなく、下顎骨の下顎角付近やオトガイ舌骨筋などの筋肉が存在する領域へと連続している。2
側頭下窩の内部には、頭部や顔面へ分布する重要な血管や神経、ならびに咀嚼運動に関与する筋肉が密集して存在している。1
筋肉としては、下顎骨を動かして咀嚼を行う内側翼突筋および外側翼突筋がこの窩の主要な構成要素として収まるように位置している。2
血管に関しては、外頚動脈の終末枝の一つである顎動脈が側頭下窩を通過し、顔面の深部組織や歯、鼻腔などへ血液を供給している。1
また、顎動脈から分岐した血管によって形成される翼突静脈叢という静脈の網状構造も、この空間の内部に広く分布している。2
神経系においては、脳神経の一つである下顎神経が卵円孔を通じて頭蓋腔から側頭下窩へと入り込む。1
下顎神経は側頭下窩において複数の枝に分岐し、咀嚼筋への運動神経や、下顎歯、舌、下口唇などの知覚神経としての役割を果たす。2
さらに、副交感神経の神経節である耳神経節もこの空間内に位置しており、耳下腺への分泌機能を調節する神経回路の一部を構成している。1
側頭下窩は、前方に位置する翼口蓋窩などの他の頭蓋底の空間とも骨縫合や裂を介して交通しており、感染症や腫瘍が頭蓋内や顔面の他の部位へ広がる際の重要な経路となることもある。2