HEALTH WORDS / 用語解説
吸収スペクトル
Absorption spectrum
吸収スペクトルとは、物質が電磁波(光)を波長ごとに吸収する度合いを、波長の関数として表したものである。1
原子や分子などの物質に連続的な波長を持つ電磁波を照射した際、特定の波長の光エネルギーが物質のエネルギー準位の差と一致すると、その光子が吸収される。1
この吸収された波長の成分が抜けた光を分散させることで、黒い線や帯として現れる吸収スペクトルが得られる。1
医学や生物学の分野において、吸収スペクトルの測定は、生体分子の同定や定量分析のための基本的な手法として広く利用されている。2
例えば、タンパク質や核酸(DNAやRNA)などの生体高分子は、特定の波長領域において特異的な光の吸収を示す。2
核酸の構成成分である塩基は紫外線領域に強い吸収帯を持ち、特に波長260ナノメートル付近に極大吸収を示すため、核酸の濃度測定や純度評価に不可欠である。2
また、タンパク質は主として波長280ナノメートル付近に芳香族アミノ酸に由来する吸収極大を持つため、これらの光学的特性を利用して生体試料中の成分を非破壊で分析することが可能となる。2
さらに、光合成に関与するクロロフィルやカロテノイドなどの色素分子も、それぞれ固有の吸収スペクトルを有している。1
これらの色素がどの波長の光を効率よく吸収するかを解析することは、植物や藻類における光合成メカニズムや光エネルギー変換効率を理解する上で極めて重要である。1
血液中のヘモグロビンも重要な研究対象であり、酸素と結合しているオキシヘモグロビンと酸素を解離したデオキシヘモグロビンでは可視光線領域から近赤外線領域にかけて異なる吸収スペクトルを示す。1
このスペクトルの差異を利用することで、生体を傷つけることなく血液中の酸素飽和度を連続的にモニタリングするパルスオキシメータなどの医療機器や、近赤外線を用いた生体機能計測技術が成り立っている。2
このように吸収スペクトルの計測は、基礎的な生化学研究から臨床医学の現場に至るまで、多様な生体物質の状態や量を調べるための強力な手段として活用されている。2