HEALTH WORDS / 用語解説
外転
Abduction
外転とは、解剖学および運動学において、身体の正中線または四肢の基準軸から遠ざかる方向へ運動させる生体の関節運動を指す用語である。1
この運動は屈曲や伸展とは異なり、冠状面上で行われることが多い基本軸に基づいた運動様式のひとつである。2
上肢(腕)における外転は、肩関節を中心として上肢を身体の側方へ水平あるいは上方へと持ち上げる動作をいう。3
この肩関節の外転には、三角筋や棘上筋などの筋肉が深く関与しており、上肢を外転させる初期の段階では主に棘上筋が働き、90度を超えるような高い位置への外転には三角筋および肩甲骨の上方回旋を伴う胸鎖関節や肩鎖関節の連動が必要となる。4
一方、下肢(脚)における外転は、股関節を中心として両脚の間隔を広げるように下肢を外側へ動かす運動である。3
股関節の外転には、中殿筋や小殿筋、大腿筋膜張筋などの筋群が主要な役割を果たしており、歩行時における骨盤の安定性を保つ上で極めて重要な機能を担っている。4
手指や足趾といった末端の部位においても外転の概念は適用され、手の手指の場合は中指を基準軸として各指が離れていく方向への運動を、足の趾の場合は第2趾を基準軸として離れる運動をそれぞれ外転と定義している。1
このように、外転は四肢の空間的な位置を変化させる基本的な運動であり、日常生活における様々な動作やスポーツ活動におけるパフォーマンスの発揮に不可欠な生体力学的要素となっている。3
臨床医学やリハビリテーション医学の領域においては、関節の可動域を測定する関節可動域測定法の主要な項目のひとつとして外転の角度が評価される。5
中枢神経系の障害や末梢神経麻痺、あるいは筋疾患や関節疾患などによって外転に関与する筋肉や神経が障害を受けると、上肢や下肢を外側に持ち上げる機能が低下または消失し、歩行障害や上肢の機能障害を引き起こす原因となる。6
参考文献・出典
- 日本人体解剖学(上巻): https://www.nukunuku.jp/anatomy/jintai1.html ↩1 ↩2
- 解剖学用語: http://www.anatomy.med.keio.ac.jp/funatama/anatomy/jintai/jintai.html ↩
- 標準理学療法学・作業療法学 基礎医学 解剖学: https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/33130 ↩1 ↩2 ↩3
- 局所解剖学: https://www.jsra.or.jp/jsra/publication/j_anatomy.html ↩1 ↩2
- 関節可動域制限の評価と治療: https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/35/6/35_6_315/_pdf ↩
- 標準整形外科学: https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/34320 ↩