HEALTH WORDS / 用語解説
慢性消耗病
Chronic Wasting Disease
慢性消耗病とは、シカ科動物に発症する致死的な伝達性海綿状脳症(TSE)の一種であり、異常型プリオン蛋白の蓄積を特徴とする神経変性疾患である。1
本病は、シカ、ヘラジカ、トナカイなどのシカ科動物に自然感染することが知られており、プリオンと呼ばれる蛋白質の構造異常によって引き起こされる。2
感染した動物は、体重の著しい減少、神経症状、歩行異常、過度な唾液分泌や飲水量の増加などを示し、発症した場合は数ヶ月から数年のうちに必ず死に至る。1
慢性消耗病の大きな特徴の一つとして、動物の間での水平感染力が非常に強い点が挙げられ、唾液、糞便、尿などの排泄物を介して環境中にプリオンが放出される。2
放出されたプリオン蛋白は土壌や植物に吸着した状態で長期間にわたり感染性を維持するため、牧草地や森林などの生態系を通じて他の個体へと伝播しやすい性質を持っている。1
また、熱や紫外線、通常の消毒薬に対する強い抵抗性を示すため、一度汚染された環境の浄化や感染拡大の防止が極めて困難であることも防疫上の大きな課題となっている。2
ヒトへの感染性については、現時点において人間が慢性消耗病にり患したという確実な科学的証拠は確認されていないものの、牛海綿状脳症(BSE)の教訓を踏まえ、公衆衛生上の観点から継続的な監視と調査が行われている。1
世界保健機関(WHO)や各国の保健機関は、慢性消耗病に感染した可能性のある動物の肉や組織を食品として流通させないこと、およびハンターに対しては狩猟時の感染防護を講じるよう注意喚起を行っている。2