HEALTH WORDS / 用語解説
毒素原性大腸菌
Enterotoxigenic Escherichia coli
毒素原性大腸菌とは、下痢を引き起こす毒素を産生する大腸菌の総称であり、主に発展途上国における旅行者下痢症の主要な原因菌として知られている。1
大腸菌は本来、ヒトや動物の腸管内に常在する無害な菌が大半を占めるが、一部の株は遺伝子を保有しており、宿主に対して病原性を示す。2
毒素原性大腸菌が産生する毒素には、熱易熱性毒素(LT)と熱安定性毒素(ST)の2種類が存在し、これらは腸管上皮細胞の受容体に結合して細胞内の情報伝達系を活性化させる。2
その結果、腸管内への電解質や水分の過剰な分泌が引き起こされ、典型的には水様性の下痢や腹痛、悪心、嘔吐などの消化器症状が急激に発症する。1
感染経路としては、菌に汚染された水や食物の経口摂取が主であり、衛生環境が十分ではない地域へ渡航する際の食中毒リスク要因として特に警戒されている。2
診断にあたっては、患者の糞便を用いた細菌培養検査や、遺伝子検査、毒素の検出が行われ、原因菌の特定がなされる。1
治療の基本は、下痢によって失われた水分と電解質を速やかに補給する経口補水療法や輸液療法などの対症療法であり、必要に応じて抗菌薬が使用されることもある。2
予防においては、生水や氷、十分に加熱されていない食品の摂取を避けることや、調理前や食事前の手洗いを徹底することが極めて重要である。1