HEALTH WORDS / 用語解説
生態回廊
Ecological corridor
生態回廊とは、分断された生息地間をつなぎ、野生生物の移動や遺伝子交流を可能にする帯状の空間や環境のことである。1 緑の回廊やコリドーとも呼ばれ、近年の生態系保全および生物多様性の維持において重要な役割を果たしている。2
人間活動による開発、道路や鉄道などのインフラストラクチャーの整備に伴い、かつて連続していた森林や湿原などの自然環境は小さなパッチ状に分断されてきた。1 生息地の分断化は、そこに暮らす動物や植物の移動を妨げ、個体群の規模を縮小させる要因となる。2 その結果、近親交配による遺伝的多様性の低下や、環境変動に対する脆弱性の増大を招き、絶滅のリスクを高めることが知られている。1 このような背景から、孤立した個体群同士を結びつけ、遺伝的交流を促進するための生態回廊の設置が各地で進められている。2
生態回廊には、多様な形態や機能が存在する。 山林や原野などの自然状態がそのまま残された連続的な帯状緑地だけでなく、農耕地や人工林などであっても野生生物が移動しやすいように管理された空間も生態回廊として機能しうる。1 また、大規模な道路によって生息地が分断された場所では、動物が安全に横断できるようにアニマルトルや緑橋などの構造物が設置されることがある。2 これらは陸上動物のロードキルを防止するとともに、植物の種子散布や花粉媒介者の移動経路としても寄与している。1
さらに、気候変動に対する適応策としても生態回廊の重要性が認識されている。2 地球温暖化に伴い、多くの生物は適した気候を求めて生息域を移動させる必要に迫られている。1 生態回廊が存在することで、生物は緯度方向や標高方向への移動を円滑に行うことが可能となり、気候変動による生物多様性への悪影響を緩和することが期待されている。2
このように、生態回廊の整備や保全は、単一の種を守るだけでなく、生態系全体の健全性やレジリエンスを維持するための基盤的な保全施策として位置づけられている。1