HEALTH WORDS / 用語解説
白内障手術
Cataract surgery
白内障手術とは、濁った水晶体を除去し、代わりに眼内レンズを挿入することで視力の回復を図る外科手術である。1 我が国において白内障手術は非常に高い頻度で施行されている眼科領域の手術であり、水晶体再建術とも称される。1
眼球の構造において、水晶体はカメラのレンズに相当する組織であり、通常は透明な状態を保つことで外界からの光を通し、網膜へと集光させている。1 しかし、加齢やその他の原因によって水晶体のタンパク質が変性し、全体あるいは一部が白く濁る病態が白内障である。2 水晶体が混濁すると、光が十分に透過できなくなったり光が乱反射したりするため、視力低下、コントラスト感度の低下、羞明(まぶしさ)、霧視(かすみ目)などの症状が引き起こされる。2
白内障の初期段階では薬物療法として点眼薬が処方されることがあるが、これらは水晶体の濁りを根本的に消失させたり進行を完全に停止させたりするものではない。2 そのため、日常生活や職業上の不都合が生じた場合や、緑内障などの合併症予防が必要な場合には、白内障手術が適応となる。2
現代の標準的な白内障手術では、超音波乳化吸引術(Phacoemulsification and Aspiration: PEA)が広く採用されている。1 この手技では、まず角膜あるいは強膜の縁に数ミリ程度の微小な切開創を作成する。1 続いて、水晶体を包んでいる水晶体嚢の前面を円形に切開・除去する前嚢切開(連続環状PIRED前嚢切開など)を行った後、超音波チップを眼内に挿入する。1 発振させた超音波のエネルギーによって硬化した水晶体核を破砕・乳化し、同時に吸引して除去する。1 水晶体皮質の残渣もきれいに吸引・清掃し、水晶体嚢という薄い膜状の袋だけを眼内に残す。1
濁った水晶体を取り除いた後、失われた屈折力を補うために眼内レンズ(Intraocular Lens: IOL)が挿入される。1 眼内レンズは、残された水晶体嚢の中に固定される。1 眼内レンズには、あらかじめ焦点を一箇所に合わせる単焦点眼内レンズと、遠くと近くなど複数の距離に焦点を合わせられる多焦点眼内レンズが存在し、患者のライフスタイルや眼の状態に応じて選択される。1
手術は通常、局所麻酔(点眼麻酔やテノン嚢下麻酔など)下で行われ、全身麻酔と比較して身体的負担が少ない日帰り手術や短期入院での手術として実施されることが多い。1 切開創が極めて小さいため、多くの場合で縫合を必要とせず、自然閉鎖による創傷治癒が期待できる。1
一方で、白内障手術は安全性の高い術式であるものの、眼内を操作する外科手術である以上、合併症のリスクが皆無ではない。1 術後に発生しうる主な合併症や偶発症としては、後発白内障、眼内炎、黄斑浮腫、水疱性角膜症、水晶体後嚢破損、レンズ偏位などが挙げられる。1 特に後発白内障は、手術後に残した水晶体嚢の裏面が時間の経過とともに濁ってくる現象であり、視力低下を伴う場合には外来でレーザー治療(YAGレーザー後嚢切開術)を行うことで改善が可能である。2