HEALTH WORDS / 用語解説
神経症性障害
神経症性障害とは、世界保健機関(WHO)のICD-10精神および行動の障害の分類等において用いられてきた臨床上の概念であり、明らかな器質性の病因が認められないにもかかわらず、多彩な精神症状や身体症状を呈する一連の精神障害の総称である。1
かつては心因性の疾患として広く神経症(ネウローゼ)と呼ばれていたカテゴリーであるが、現代の精神医学や国際疾病分類の改訂においては、より厳密な症状記述に基づく診断が行われるようになっている。1
神経症性障害に分類される病態の特徴として、患者自身が自身の症状の異常性を自覚しており、現実検討能力が保たれている点が挙げられる。統合失調症などの精神病性障害で見られるような幻覚や妄想といった現実離れした認知の歪みは原則として存在せず、社会生活における現実適応の能力自体は維持されていることが多い。1
この障害群には、過剰な不安や恐怖を主徴とする不安障害やパニック障害、強迫観念や強迫行為を繰り返す強迫症(強迫性障害)、身体的な原因が見当たらないにもかかわらず疼痛や感覚障害などの身体症状が現れる身体表現性障害などが含まれる。1
また、過去の心理的トラウマや強烈なストレス体験が引き金となって発症する急性ストレス障害や外傷後ストレス障害(PTSD)なども、広義の神経症圏の疾患として扱われることがある。1
神経症性障害の発症機序には、遺伝的素因や脳内神経伝達物質の代謝異常といった生物学的要因に加え、幼少期の生育歴、性格傾向、日常生活における過度な心理社会的生活環境のストレスなど、多様な要因が複雑に関与していると考えられている。1
臨床診断にあたっては、詳細な問診や精神医学的評価を通じて器質性疾患の除外を行い、症状の重症度や日常生活への支障度を慎重に評価する必要がある。2
治療のアプローチとしては、心理療法(精神療法)と薬物療法の組み合わせが中心となる。薬物療法では、症状の軽減を目的として抗不安薬や抗うつ薬などが処方されることがある。1
一方で心理療法においては、認知行動療法などが広く用いられ、患者がストレスに対する対処行動(コーピング)を身につけ、認知の偏りを修正することで症状の改善と再発防止を目指す介入が行われる。1