HEALTH WORDS / 用語解説
細胞内記録
Intracellular recording
細胞内記録とは、微小な電極を細胞の内部に刺入し、細胞膜を挟んだ内側と外側の電位差である膜電位を直接測定する電気生理学的な計測手法である。1
この技術を用いることで、神経細胞や筋細胞などの興奮性細胞が発火する活動電位や、外部からの刺激に応答して生じるシナプス後電位などの微小な電位変化を高精度に捉えることが可能となる。1
細胞内記録の歴史において重要な役割を果たしたのは、先端を数マイクロメートル以下に細く引き延ばしたガラス管微小電極の発明である。2
内部には塩化カリウムなどの電解質溶液が満たされており、これが導線を介して増幅器につながることで、細胞内の電気的活動を外部へ伝達する導体として機能する。1
従来の細胞外記録では、細胞の周囲に生じる電場の変化を間接的に観察するにとどまっていたが、細胞内記録の登場によって細胞個別の詳細な膜電位のダイナミクスを解析できるようになった。1
細胞内記録の代表的な手法の一つに、ガラス管電極を用いるシャープ電極法がある。1
この方法では、細いガラス管を細胞膜に突き破って内部へと侵入させるため、膜に生じる損傷を最小限に抑える技術が求められる。1
また、これを発展させたパッチクランプ法では、先端の開口部が1マイクロメートル未満のガラス管電極を細胞膜に密着させ、膜の一部を吸引してパッチと呼ばれる小さな領域を形成する。3
パッチクランプ法の開発により、細胞膜に存在する単一のイオンチャネルレベルでの電流を測定することが可能となり、神経科学や薬理学の分野に革命をもたらした。2
細胞内記録は、中枢神経系における神経回路の情報処理メカニズムを解明するための強力な武器として活用されている。1
例えば、大脳皮質や海馬などの脳の各部位において、神経細胞がどのように信号を受信し、統合し、そして次なる細胞へ伝達しているのかをミリ秒単位の時間解像度で明らかにすることに寄与している。1
さらに、生体内のホルモン分泌細胞や心筋細胞などにおける興奮収縮連関や分泌機構の電気生理学的な背景を探る上でも、不可欠な実験手法として広く採用されている。1