HEALTH WORDS / 用語解説
線量分布
Dose distribution
線量分布とは、放射線が物質や生体内を通過する際に、そのエネルギーがどのように吸収されるかを空間的な広がりとして示したものである。1 生物学的組織や腫瘍などの対象領域内における吸収線量の大きさやその空間的変化を視覚的あるいは数値的に表したものであり、放射線治療の計画や放射線防護の分野において極めて重要な概念となっている。2
放射線治療の領域においては、標的となる腫瘍に対しては必要かつ十分な線量を集中させ、同時に周囲の正常な組織や重要器官への被ばくを可能な限り低減させる必要がある。3 この目的を達成するために、コンピュータを用いた線量計算アルゴリズムを用いて詳細な線量分布が算出される。4 近年の高精度な放射線治療である強度変調放射線治療(IMRT)や体外照射、粒子線治療などでは、複雑な形状の腫瘍に対しても均一な線量分布を形成することが可能となっている。5
線量分布の評価には、一般的に等線量曲線(isodose curve)や線量体積ヒストグラム(DVH)などが用いられる。6 等線量曲線は、同一の吸収線量を示す点を結んだ曲線であり、2次元あるいは3次元的な線量の空間的勾配を直感的に把握するために利用される。7 一方、DVHは器官や腫瘍の体積に対して、どの程度の線量が照射されたかをグラフ化したものであり、治療計画の妥当性を定量的かつ客観的に評価するための必須の指標となっている。8
また、放射線防護や保健物理学の分野においても、作業環境や人体内部における線量分布の把握は不可欠である。9 外部被ばくや内部被ばくにおける線量評価では、人体模型(ファントム)を用いた計算やシミュレーションにより、体内各臓器における線量分布が推定される。10 これにより、確率的影響や決定論的影響といった放射線障害のリスクを予測し、安全管理基準の策定や被ばく線量の管理に役立てられている。11
参考文献・出典
- 原子放射線の影響に関する国連科学委員会: https://www.unscear.org/unscear/en/publications.html ↩
- 国立国会図書館インターネット資料収集事業: https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11311545 ↩
- 国立がん研究センター: https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/radiotherapy/rt_kind.html ↩
- 日本医学物理学会: https://jsmp.org/jpn/ ↩
- 量子科学技術研究開発機構: https://www.qst.go.jp/site/qms/1666.html ↩
- 日本放射線腫瘍学会: https://www.jastro.or.jp/ ↩
- 医療情報データベース: https://www.pmda.go.jp/ ↩
- 日本医学放射線学会: https://www.radiology.or.jp/ ↩
- 原子力規制委員会: https://www.nsr.go.jp/ ↩
- 放射線医学総合研究所: https://www.nirs.qst.go.jp/ ↩
- 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/ ↩