ホーム腎性貧血

HEALTH WORDS / 用語解説

腎性貧血

Renal Anemia

腎性貧血とは、慢性腎臓病の進行に伴って腎臓からのエリスロポエチンの産生が低下し、骨髄での赤血球の産生が減少することによって引き起こされる貧血のことである。1 慢性腎臓病の患者においては病期の進行とともにその合併頻度が高くなり、腎機能の低下に比例してヘモグロビン濃度が低下する傾向がみられる。2 腎臓は造血ホルモンであるエリスロポエチンを産生・分泌する主要な臓器であるが、慢性腎臓病により腎実質が障害されると、このエリスロポエチンの絶対的な産生不足が生じる。1 その結果、骨髄における赤血球の前駆細胞の増殖や分化が十分に促されず、造血機能が低下して貧血状態に至る。2 また、腎性貧血の発症機序にはエリスロポエチンの産生低下だけでなく、尿毒症性毒素の蓄積による赤血球の寿命短縮や、微小炎症状態に伴う鉄代謝の異常なども複合的に関与している。1 特に慢性腎臓病患者ではヘプシジンというペプチドホルモンの増加を介して鉄の消化管からの吸収やマクロファージからの鉄再利用が阻害され、造血に必要な鉄が骨髄へ十分に供給されない鉄利用障害(機能性鉄欠乏)がしばしば合併する。2 臨床症状としては、通常の貧血と同様に動悸、息切れ、倦怠感、疲労感、めまい、顔色不良などが現れるが、慢性腎臓病の症状と重複するため見過ごされやすい。1 貧血が長期化して持続性の酸素供給不足に陥ると、心臓に過度な負担がかかるため左室肥大や心不全といった心血管疾患のリスクが増大し、原疾患である腎機能のさらなる悪化や生命予後の不良につながることが知られている。2 そのため、慢性腎臓病の管理においては早期からの貧血評価ときめ細やかな治療が極めて重要視されている。1 治療にあたっては、まず血清鉄やフェリチン値を測定して体内動態を確認し、鉄欠乏が認められる場合には鉄剤の補充が行われる。2 鉄の補給だけではヘモグロビン値の改善が不十分な場合やエリスロポエチンの産生障害が主因である場合には、造血刺激薬(ESA製剤)の投与が行われ、骨髄における赤血球産生を直接的に刺激して貧血の改善を図る。1 さらに近年では、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害薬(HIF-PH阻害薬)と呼ばれる新しい経口薬も治療選択肢として広く用いられるようになっており、これは身体が低酸素状態にあると錯覚させることで内因性のエリスロポエチン産生を誘導するとともに、鉄代謝に関与する分子を調節して造血を促す作用機序を持っている。2 これらの治療薬を用いてヘモグロビン濃度を適切な範囲に維持することは、患者のQOL(生活の質)の向上のみならず、心血管合併症の予防や腎保護の観点からも非常に重要な意義を持っている。1

参考文献・出典

  1. 腎臓病セルフチェック: https://www.snz.jp/about_ckd/complication/renal-anemia.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
  2. e-ヘルスネット: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-006.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6