HEALTH WORDS / 用語解説
薬物依存
Drug Dependence
薬物依存とは、精神薬理作用を持つ薬物を繰り返し使用することによって、その薬物なしではいられなくなった状態、あるいは精神的依存や身体的依存が形成された状態を指す。世界保健機関(WHO)などの定義によれば、薬物の摂取量を自己制御できなくなり、他の事柄よりもその薬物の使用が生活の中心となってしまう慢性疾患の側面を持つ。1
薬物依存のメカニズムには、中枢神経系への作用が深く関与している。多くの依存性薬物は、脳内の報酬系と呼ばれる神経回路、特にドパミン作動性神経に作用し、過剰なドパミンの遊離を引き起こす。これにより強烈な快感や報酬効果が生じ、脳の神経可塑性に変化をもたらすことで、再び薬物を求める行動(渇望)が強化される。2
依存の状態は、大きく精神的依存と身体的依存に分類される。精神的依存とは、薬物使用によって得られる快感や、不快な気分から逃避したいという強い欲求から、その薬物を渇望する状態をいう。一方、身体的依存とは、反復的な薬物使用により身体がその薬物の存在に適応(耐性の形成など)した結果、薬物の使用を中止あるいは減量した際に、激しい離脱症状(禁断症状)が現れる状態を指す。1
臨床的には、物質使用障害(Substance Use Disorder)などの診断基準において、その重症度が評価される。薬物依存の対象となる物質には、覚醒剤、麻薬、大麻、有機溶剤、処方薬(睡眠薬や抗不安薬など)のほか、ニコチンやアルコールといった合法的な物質も含まれる。これらはそれぞれ異なる作用機序を持つが、共通して依存性を有する。2
治療およびリハビリテーションにおいては、薬物使用の停止(断薬・禁酒)を維持するための医学的治療だけでなく、心理社会的治療や自助グループへの参加が極めて重要である。脳の機能変化を伴う慢性疾患であるため、単なる意志の弱さではなく、包括的な医療と福祉の支援を継続的に行う必要性がある。1