HEALTH WORDS / 用語解説
μ受容体
μ-opioid receptor
μ受容体とは、主として中枢神経系や末梢神経系に存在し、鎮痛作用や依存性の発現に関与する主要なオピオイド受容体の一つである。1
μ受容体はGタンパク質共役受容体(GPCR)のファミリーに属し、特にGi/Goタンパク質と共役して機能する。2
アゴニストが結合すると、アデニル酸シクラーゼの抑制、電位依存性カルシウムチャネルの阻害、および内向き整流カリウムチャネルの活性化が引き起こされる。2
これにより神経細胞の膜が過分極し、神経伝達物質の遊離が抑制されることで、疼痛シグタルの伝達がブロックされる。1
生体内にはエンドルフィンやエンケファリンなどの内因性オピオイドペプチドが存在し、これらがμ受容体に生理的なリガンドとして作用している。2
外因性の代表的なアゴニストとしてはモルヒネ、フェンタニル、オキシコドンなどの医療用麻薬(オピオイド鎮痛薬)が挙げられ、これらは臨床において強力な鎮痛効果を発揮する。1
一方で、脳内の報酬系に存在するμ受容体が活性化されると、ドーパミンの遊離が促進され、強い快感や依存性(精神依存および身体依存)が引き起こされる原因となる。2
また、脳幹の呼吸中枢に存在するμ受容体が刺激されることで、呼吸抑制などの重大な副作用が生じる場合がある。1
臨床現場では、オピオイドによる呼吸抑制や便秘などの副作用を軽減、あるいは過剰投与を逆転させる目的で、ナロキソンなどのμ受容体アンタゴニスト(拮抗薬)が使用される。2
このように、μ受容体は疼痛管理において極めて重要な標的であると同時に、薬物依存のメカニズムとも深く結びついているため、新規鎮痛薬の開発において盛んに研究が行われている。1