HEALTH WORDS / 用語解説
ATG13
ATG13
ATG13とは、オートファジー(自食作用)の初期過程において重要な役割を果たすタンパク質であり、ULK1 キナーゼ複合体の構成要素の一つである。1 真核生物の間で高度に保存されており、細胞内の栄養状態やストレスに応答してオートファジーの誘導を制御する中心的分子として機能する。2
オートファジーは、細胞質内の不要になったタンパク質や損傷した小器官をリソソームへと輸送して分解する生体防御機構であり、飢餓状態における栄養のリサイクルや細胞の品質管理において必須の役割を担っている。1 このオートファジーの開始には、細胞内シグナル伝達を統合するULK1 キナーゼ複合体の活性化が必要不可欠であり、ATG13はこの複合体の中でULK1 タンパク質、RB1CC1(FIP200)、およびATG101と強固に結合している。3
栄養素が十分に存在する通常の細胞環境下では、mTORC1(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体1)が活性化しており、ULK1 キナーゼ複合体の主要な構成因子であるULK1およびATG13をリン酸化することで、その酵素活性や膜への局在を負に制御している。3 しかし、アミノ酸の欠乏や飢餓状態、あるいは細胞ストレスが生じるとmTORC1の活性が低下し、それに伴ってATG13およびULK1のリン酸化状態が変化する。2
mTORC1の抑制によって脱リン酸化されたATG13を含むULK1 キナーゼ複合体は、小胞体などのドナー膜領域へと速やかに移行する。1 ここでATG13はULK1の活性化を助けるとともに、下流のオートファジー関連因子をリクルートするプラットフォームとしての役割を果たし、隔離膜(phagophore)と呼ばれる初期膜構造の形成を誘導する。3 この一連の分子動態は、オートファジーの小胞形成プロセスにおける最初のステップであり、隔離膜が伸長してオートファソームが完成するための引き金となる。2
また、ヒトにおけるATG13は遺伝子レベルでも解析が進められており、染色体上に位置するATG13遺伝子は多様な組織で発現していることが確認されている。1 がんや神経変性疾患などの様々な病態において、オートファジー異常との関連性が指摘されており、ATG13をはじめとするオートファジー関連分子の動態を明らかにすることは、新しい治療法の開発や疾患メカニズムの解明において重要な意義を持つ。1
参考文献・出典
- National Center for Biotechnology Information: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/9776 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
- UniProt: https://www.uniprot.org/uniprotkb/O75143/entry ↩1 ↩2 ↩3
- 蛋白質研究所 ターゲットデータベース: https://www.glycoforum.jp/database/target/Target_078.html ↩1 ↩2 ↩3