HEALTH WORDS / 用語解説
CRY2
Cryptochrome 2
CRY2とは、植物から動物に至るまで幅広い生物に保存されている光受容体であり、概日リズム(体内時計)の調節や青色光に応答したシグナル伝達において中心的な役割を果たすタンパク質である。1
CRY2はクリプトクロムファミリーに属する flavoprotein (フラボプロテイン)の一種であり、主として可視光線のうち青色光領域の光を発色団であるFAD(フラビン・アデニン・ジヌクレオチド)を介して吸収する性質を持っている。2
哺乳類などの動物においては、CRY1とともに概日時計のネガティブフィードバックループを構成する主要な転写抑制因子として機能している。1
細胞質内で合成されたCRY2は、PER(ペリオド)タンパク質などと複合体を形成し、核内へと移行したのちにCLOCKやBMAL1といった転写因子の活性を直接的あるいは間接的に抑制することによって、時計遺伝子の発現周期を維持している。2
また、哺乳類のCRY2は光依存的な時計のリセット機構だけでなく、光非依存的な生体時計の周期決定においても重要な役割を担っていることが知られている。1
植物、特にシロイヌナズナ(*Arabidopsis thaliana*)などのモデル生物におけるCRY2は、芽生えの黄化抑制、茎の伸長抑制、花成(開花)の誘導といった多様な光形態形成反応を制御する光受容体として働く。2
植物のCRY2は光照射を受けると自己リン酸化を受け、COP1をはじめとする下流の ubiquitin ligase (ユビキチンリガーゼ)複合体や転写因子との相互作用を変化させ、遺伝子発現の網羅的な変動を引き起こす。2
近年の分子生物学や合成生物学の分野では、光によってタンパク質同士の結合を誘導できる光遺伝学(オプトジェネティクス)ツールとしてもCRY2が広く応用されている。1
例えば、CRY2と、その相互作用パートナーであるCIB1などのドメインを組み合わせることで、細胞内でのタンパク質の局在やシグナル伝達を青色光の照射によってミリ秒から秒単位で人工的に制御する技術が開発されている。1
このように、CRY2は自然界における光受容と時間測定のメカニズムを解明するための基礎研究の対象として重要であるだけでなく、最先端のライフサイエンス研究を支えるツールとしても極めて高い価値を持っているタンパク質である。2