HEALTH WORDS / 用語解説
自己リン酸化
自己リン酸化とは、同一の蛋白質分子が自身のアミノ酸残基に対してリン酸基を転移し、共有結合させる生化学的な反応過程のことである12。
自己リン酸化は、主としてプロテインキナーゼ(タンパク質リン酸化酵素)などの酵素分子において見出される重要な自己触媒作用である12。 多くの受容体型チロシンキナーゼなどの細胞膜受容体において、リガンドの結合をきっかけとして引き起こされる分子間あるいは分子内の自己リン酸化は、細胞内シグナル伝達の経路を起動するための極めて初期かつ必須のステップとして機能している32。
生体内のシグナル伝達系において、自己リン酸化は単なる化学反応にとどまらず、細胞の増殖、分化、代謝、さらにはアポトーシスといった多様な生命現象の調節において中心的な役割を担っている32。 自己リン酸化が生じることで、酵素自体の活性が劇的に上昇したり、あるいは他の下流分子が結合するためのドッキングサイトが細胞内に形成されたりするなど、分子の構造的および機能的な変化が誘発される32。
このような自己リン酸化機構の破綻や異常な活性化は、がんをはじめとする様々な疾患の発症や進展に深く関与していることが分子生物学や医学の研究によって明らかにされている32。 そのため、自己リン酸化のメカニズムを詳細に解明することは、分子レベルでの病態理解につながるだけでなく、新たな分子標的薬の開発や創薬研究の分野においても極めて重要な課題となっている32。