HEALTH WORDS / 用語解説
PDE9A
PDE9Aとは、ホスホエステラーゼ(PDE)ファミリーの一種であるホスホジエステラーゼ9A、およびそれをコードする遺伝子の名称である。1
細胞内の情報伝達物質であるサイクリックGMP(cGMP)を加水分解して不活化する作用を持つ酵素であり、脳内をはじめとする様々な組織で発現している。2
ヒトゲノムにおいてPDE9A遺伝子は第2染色体の長腕(2q34.2-q35付近)に位置しており、選択的スプライシングによって複数のアイソフォームが生成されることが知られている。((NCBI Gene: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/5152
PDE9AはcGMPに対する親和性が非常に高いという生化学的な特徴を有しており、cGMPシグナル伝達系の調節において中心的な役割を担っている。2
中枢神経系においては、特に記憶や学習などの認知機能に関与する脳の領域である海馬や大脳皮質、線条体などで比較的高い発現が確認されている。3
このような組織分布の特性から、PDE9Aはアルツハイマー病などの神経変性疾患に伴う認知機能障害に対する治療薬の標的分子として注目を集めてきた。4
脳内のPDE9Aを阻害してcGMPの濃度を高めることで、シナプス可塑性の改善や神経保護作用が誘導され、記憶力の減退を軽減できる可能性が研究されている。4
また、PDE9Aは中枢神経系だけでなく、心血管系や平滑筋組織など末梢の臓器においても一定の発現が見られ、心筋の肥大や心不全、平滑筋の収縮といった病態生理学的プロセスへの関与も示唆されている。5
創薬化学の分野では、PDEファミリーの他のサブタイプ(PDE5など)に対する選択性を高め、脳内へ効率よく移行するPDE9A阻害薬の開発が進められており、臨床試験などを通じた安全性や有効性の検証が行われている。4
このように、PDE9Aは分子生物学および薬理学の領域において、細胞内シグナル伝達の制御メカニズムの解明や、新たな中枢神経疾患・心血管疾患治療薬の創出に向けた重要な研究対象となっている。15