HEALTH WORDS / 用語解説
SV2A
Synaptic vesicle glycoprotein 2A
SV2Aとは、シナプス小胞の膜に存在する糖タンパク質の一種であり、神経伝達物質のエクソサイトーシス(放出)において重要な役割を果たしている膜タンパク質である。1
SV2Aは、シナプス小胞糖タンパク質ファミリー(SV2ファミリー)の主要な構成要素であり、哺乳類の中枢神経系および内分泌細胞に広く分布している。2 構造的には12回膜貫通型の膜タンパク質であり、シナプス小胞の形成や安定化、あるいは神経伝達物質を充填した小胞の細胞膜へのシナプス小胞開口放出|開口放出の調節に関与していると考えられている。3
薬理学および臨床医学の分野において、SV2Aは抗てんかん薬の主要な分子標的として極めて重要な位置を占めている。4 第2世代の抗てんかん薬であるレベチラセタムやその誘導体であるラコサミド類似のブリバラセタムなどは、このSV2Aに特異的に結合することによって神経伝達物質の放出を抑制し、てんかん発作に対する抗けいれん作用を発揮する。5 これらの薬剤がSV2Aに結合する親和性の高さは、それぞれの抗てんかん薬の臨床的な薬効の強さと強い相関関係を示すことが学術論文等で示されている。6
さらに、SV2Aは脳内のシナプス密度を評価するためのバイオマーカーとしても研究が進められている。7 陽電子放射断層撮影(PET)を用いたイメージングにおいて、SV2Aに特異的に結合する放射性リガンドを使用することにより、アルツハイマー病や統合失調症などの神経変性疾患や精神疾患におけるシナプスの脱落や機能異常を生体内で定量的に評価することが可能になりつつある。8
このように、SV2Aは基礎生物学におけるシナプス小胞の機能解明だけでなく、脳神経外科や精神医学領域における疾患の病態解明、診断、治療薬開発の標的として多大な注目を集めている分子である。9
参考文献・出典
- UniProt: https://www.uniprot.org/uniprotkb/Q7L0J3/entry ↩
- NCBI Gene: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/9900 ↩
- PubChem: https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/gene/9900 ↩
- Pharmaceuticals (Basel): https://www.mdpi.com/1424-8247/14/7/610 ↩
- European Medicines Agency: https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/EPAR/keppra ↩
- Journal of Medicinal Chemistry: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jm501332f ↩
- Journal of Nuclear Medicine: https://jnm.snmjournals.org/content/57/10/1582 ↩
- Molecular Psychiatry: https://www.nature.com/articles/s41380-021-01369-0 ↩
- Frontiers in Molecular Neuroscience: https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnmol.2017.00226 ↩