HEALTH WORDS / 用語解説
抗てんかん薬
Antiepileptic drugs
抗てんかん薬とは、てんかん患者における発作の反復を抑制し、これを予防するために用いられる薬剤の総称である。1 主に脳の過剰な神経活動や異常な電気信号の伝発を抑える作用機序を持ち、神経細胞の膜電位の安定化や興奮性伝達の抑制を介してけいれんなどの発作症状をコントロールする。2
てんかんの治療において、抗てんかん薬物療法の基本は単剤治療であり、少量の薬剤投与から開始して発作の消失と副作用の発現に注意しながら至適用量まで段階的に増量していくことが原則とされる。1 単剤でのコントロールが困難な場合には、異なる作用機序を持つ複数の薬剤を組み合わせる多剤併用療法が検討されるが、その際には薬物相互作用や副作用の増強に十分な配慮が必要となる。2
抗てんかん薬の歴史的・現代的な分類として、古い世代の伝統的な薬剤である従来型抗てんかん薬と、比較的新しい世代の薬剤である新世代抗てんかん薬(新規抗てんかん薬)に大別される。1 従来型抗てんかん薬にはフェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン、バルプロ酸などが含まれ、長年にわたり広範な臨床現場で使用されてきた実績を持つ反面、血中濃度の変動や肝代謝酵素の誘導作用に基づく他の医薬品との相互作用が問題になりやすい特性がある。2 一方、新世代抗てんかん薬にはレベチラセタム、ラモトリギン、トピラマート、ラクサミドなどが含まれ、一般に薬物動態がより予測しやすく、肝酵素への影響が少ないものや、副作用プロファイルが比較的穏やかなものが多いため、現代の治療戦略において重要な選択肢となっている。1
これらの薬剤の主要な分子標的および作用機序としては、電位依存性ナトリウムチャネルの不活性化促進による神経膜の安定化、電位依存性カルシウムチャネルの遮断による興奮性神経伝達物質の遊離抑制、GABA受容体機能の増強あるいはGABAトランスポーターの阻害による抑制性神経伝達の亢進、およびグルタミン酸受容体(AMPA受容体やNMDA受容体など)の拮抗作用など多岐にわたる。2 このような多様な作用機序は、部分発作(焦点発作)および全般発作といった発作の臨床的特徴や脳波上の異常所見の種類に応じて適切に選択される。1
抗てんかん薬の投与にあたっては、患者ごとの年齢、体重、肝機能や腎機能といった臓器機能、妊娠の可能性や合併症の有無を総合的に評価する必要がある。2 特に一部の抗てんかん薬には催奇形性のリスクが知られているため、妊婦または妊娠を希望する女性への投与には極めて慎重な判断が求められる。1 また、血中濃度モニタリング(TDM)を活用して、有効血中濃度を維持しつつ中毒域への到達を防ぎ、眠気、めまい、運動失調、皮疹などの有害事象を早期に発見・管理することが治療継続の上で極めて重要である。2