HEALTH WORDS / 用語解説
hnRNP
hnRNP(Heterogeneous nuclear ribonucleoprotein、不均一核リボ核蛋白質)とは、真核生物の細胞核内においてRNAポリメラーゼIIによって転写された直後の前駆体mRNA(pre-mRNA)と結合し、複合体を形成するタンパク質群の総称である。1 2
hnRNPは、細胞内において様々な遺伝子発現の制御機構に関与している重要なタンパク質ファミリーであり、これまでに多数の異なる分子種が同定されている。分子量や等電点などの生化学的性質が多様であることから、かつて細胞核抽出液の電気泳動上で不均一なバンドを示す画分として検出されたことに由来してこの名称が付けられた。1 2
構造的には、hnRNPはRNA結合ドメイン(RBD)やRNA認識モチーフ(RRM)、あるいはRGGボックスといった特徴的なアミノ酸配列モチーフを保持しており、これらを介してpre-mRNA上の特定の塩基配列や高次構造を特異的に認識して結合する。このようなタンパク質とRNAの相互作用を通じて、転写されたばかりのRNAがむき出しの状態で分解されるのを防ぐとともに、適切なRNAプロセッシングへと導く役割を果たす。1 2
hnRNPの主要な機能の一つとして、スプライシング制御が挙げられる。真核生物の遺伝子にはイントロンと呼ばれる非コード領域が含まれており、mRNAが成熟する過程でこれらが正確に取り除かれ、エキソン同士が結合される必要がある。hnRNPはこのスプライシング反応において、スプライシング促進因子や抑制因子として働き、どのエキソンを残してどの領域を取り除くかを決定する選択的スプライシングの調節に深く関与している。この機構により、1つの遺伝子から多様なアイソフォームのタンパク質が産生されることが可能となる。1 2
さらに、hnRNPは細胞核内で形成された成熟mRNAの核外輸送においても重要な役割を担っている。細胞核内で転写・修飾されたmRNAは、適切なタンパク質と結合して核膜孔を通過し、細胞質へと移行しなければならない。hnRNPの幾つかのメンバーは核外輸送シグナルを持ち、mRNAを細胞質へ運ぶキャリアとして機能するほか、細胞質に到達したmRNAの翻訳効率の調節やmRNA安定性の維持、さらには局在化の制御にも寄与していることが知られている。1 2
このように、hnRNPは転写から翻訳に至るまでの広範なRNA代謝プロセスを統合的に制御するハブ分子として機能している。近年の分子生物学および医学研究においては、hnRNPの遺伝子発現異常や変異が、がんの進展、神経変性疾患、ウイルス感染症などの様々な疾患の発症や病態悪化に深く関わっていることが明らかにされつつあり、新たな治療標的としても注目を集めている。1 2