HEALTH WORDS / 用語解説
アデニレートサイクラーゼ毒素
Adenylate cyclase toxin
アデニレートサイクラーゼ毒素とは、百日咳菌(Bordetella pertussis)などの病原菌が産生する重要な病原因子の一つであり、宿主細胞の免疫応答を撹乱する毒素である。1 2
この毒素は、菌体外へ分泌されるタンパク質であり、細胞膜を直接透過して宿主細胞の細胞質内へ侵入する機能を持つ。1 2
宿主細胞内に入ったアデニレートサイクラーゼ毒素は、真核生物のカルモジュリンによって活性化されることで、ATPからcAMP(サイクリックAMP)への変換を異常に亢進させる。1 2
細胞内のcAMP濃度が異常に上昇することにより、白血球の一種であるマクロファージや好中球などの貪食作用、化学遊走、活性酸素の産生といった防御機能が著しく抑制される。1 2
さらに、アデニレートサイクラーゼ毒素自身が溶血活性を持つポアフォーミング毒素としての側面も有しており、標的細胞の細胞膜にイオン透過性の孔を形成して細胞障害を引き起こすことが知られている。1 2
百日咳の病態形成において、この毒素は百日咳毒素とともに呼吸器上皮での感染成立や免疫逃避に深く関与しており、細菌の生存と増殖に有利な環境を作り出す役割を果たしている。1 2