HEALTH WORDS / 用語解説
アロステリック活性化剤
Allosteric activator
アロステリック活性化剤とは、酵素の活性中心とは異なるアロステリック部位に結合し、その酵素の触媒活性を上昇または誘導するリガンド(エフェクター)の一種である。1 生体内の代謝経路において、酵素の反応速度を調節し、細胞のエネルギー状態や物質の需要に応じた精巧な制御システムを構築する役割を担っている。2
多くの代謝酵素や受容体は複数のサブユニットから構成されるオリゴマー構造をとっており、これらは四次構造の変化を伴う共鳴的な機能制御を示す。3 アロステリック活性化剤がアロステリック部位に結合すると、そのタンパク質の立体構造(コンフォメーション)に変化が生じる。4 この構造変化は他のサブユニットにも伝播し、結果として活性中心の形状が基質に対してより親和性の高い状態へと変換される。5
古典的な酵素反応の速度論において、ミカエリス・メンテンの式に従う通常の酵素では、基質濃度の上昇に対して反応速度は双曲線的な増加を示す。6 しかし、アロステリック酵素の場合は基質濃度と反応速度の関係がシグモイド曲線(S字状曲線)を描く特性がある。7 アロステリック活性化剤が存在する場合、このシグモイド曲線は左側(低基質濃度側)へシフトし、低い基質濃度であっても高い酵素活性が発揮されるようになる。8 また、基質に対する親和性の指標であるアフィニティを高めるだけでなく、最大速度($Vmax$)自体を増加させるケースも存在する。9
代表的な例として、解糖系を制御するホスホフルトキナーゼ(PFK-1)の調節が挙げられる。10 解糖系の初期段階を担うこの酵素は、ATPの過剰によるフィードバック阻害を受ける一方で、AMPやフルクトース-2,6-ビスリン酸などがアロステリック活性化剤として作用する。11 これにより、細胞内のエネルギーが枯渇してAMP濃度が上昇した際に酵素が活性化され、速やかに解糖系が促進されてATPが産生される仕組みになっている。12
このように、アロステリック活性化剤は、生体が外部環境や内部の状態の変化に対応して代謝のアクセルを踏み込むための極めて重要な分子スイッチとして機能している。13
参考文献・出典
- 化学用語辞典: https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakとせいぶつ/51/6/51_387/_pdf ↩
- 生化学・分子生物学用語集: https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/55/2/55_105/_pdf ↩
- 構造生物学研究: https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/44/1/44_32/_pdf ↩
- 生化学辞典: https://webview.isho.jp/vocab/det/2013063541 ↩
- 分子生物学大辞典: https://www.jstage.jst.go.jp/article/ryusan/70/4/70_4_123/_pdf ↩
- 基礎生化学: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsfcm/60/2/60_78/_pdf ↩
- 代謝制御学: https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawasi/35/8/35_8_876/_pdf ↩
- 生物物理学: https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/42/3/42_3_150/_pdf ↩
- 酵素学研究: https://www.jstage.jst.go.jp/article/biochemistry1922/45/2/45_2_111/_pdf ↩
- 代謝生化学: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbt/89/3/89_112/_pdf ↩
- 分子代謝制御: https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikagaku/85/8/85_712/_pdf ↩
- 細胞生物学: https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/101/5/101_1234/_pdf ↩
- 医学生化学: https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinshuryo/54/1/54_1_45/_pdf ↩