ホームグリコーゲン phosphorylase

HEALTH WORDS / 用語解説

グリコーゲン phosphorylase

Glycogen phosphorylase

グリコーゲン phosphorylaseとは、動物や植物などの組織においてグリコーゲンの分解(グリコーゲンolysis)を触媒する酵素であり、α-1,4-グリコシド結合をリン酸分解することによってグルコース-1-リン酸を生成する反応を担う糖質代謝の中心的な酵素である。1 グリコーゲンの非還元末端からグルコース残基を順次リン酸分解により遊離させるが、分岐点(α-1,6-グリコシド結合)の直前まで達すると作用が停止する性質を持つ。1 真核生物のグリコーゲン phosphorylaseには主に肝臓型と筋肉型が存在し、それぞれ異なる生理的役割や組織特異性を示して糖代謝の調節に関与している。2 本酵素は分子量約97,000のサブユニットから構成される二量体または四量体として機能し、補酵素としてピリドキサールリン酸を結合していることが知られている。2

生体内におけるグリコーゲン phosphorylaseの活性は、ホルモン刺激や細胞内のエネルギー状態を反映した共有結合修飾およびアロステリック効果によって厳密に制御されている。2 アドレナリンやグルカゴンなどのホルモンが受容体に結合すると、プロテインキナーゼAを介したカスケード反応が引き起こされ、不活性型であるb型の酵素がリン酸化されて高活性なa型へと変換される。2 この共有結合修飾によるリン酸化制御機構により、運動時や空腹時などの血糖値維持やエネルギー供給が必要な場面で迅速にグリコーゲンの分解が促進される。2

一方で、アロステリック制御の観点からは、非リン酸化型のb型グリコーゲン phosphorylaseに対してAMPが強力なアロステリック活性化剤として作用する。2 細胞内のATPやグルコース-6-リン酸といった高エネルギーリン酸化合物や代謝産物は、逆にb型の酵素に対して阻害的に働き、エネルギーが十分に足りている状態での無駄なグリコーゲン分解を抑制する。2 このように、共有結合修飾による大まかな活性制御と、代謝物の濃度変化に応じたアロステリック制御が協調して働くことで、生体のエネルギー代謝における精緻なホメオスタシスが維持されている。2

臨床医学的あるいは遺伝学的観点において、グリコーゲン phosphorylaseの遺伝子異常は糖原病を引き起こす原因となることが知られている。3 例えば、筋肉型のグリコーゲン phosphorylaseをコードする遺伝子の変異はマール・アード病(糖原病第V型)を発症させ、運動時の筋肉の痙攣、易疲労感、ミオグロビン尿症などを特徴とする臨床症状を呈する。3 また、肝臓型グリコーゲン phosphorylaseの欠損や機能異常は糖原病第VI型(ハール病)の原因となり、肝腫大や低血糖などの代謝異常を引き起こす。3 これらの疾患の理解や診断、治療法の開発においても、グリコーゲン phosphorylaseの生化学的特性や構造生物学的な解析結果は極めて重要な基礎資料となっている。1

参考文献・出典

  1. 蛋白質構造データバンク: https://pdbj.org/mine/summary/1gsp ↩1 ↩2 ↩3
  2. J-GLOBAL: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907025642838329 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8
  3. MSDマニュアル プロフェッショナル版: https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/04-内分泌疾患-代謝疾患/糖代謝異常/糖原病 ↩1 ↩2 ↩3