ホームグリコプロテインH

HEALTH WORDS / 用語解説

グリコプロテインH

glycoprotein H

グリコプロテインHとは、ヘルペスウイルス科のウイルスが持つエンベロープ(外膜)上に存在する保存性の高い糖蛋白質であり、通常グリコプロテインLと複合体を形成して宿主細胞への侵入や細胞融合に必須の役割を果たす膜蛋白質である。1 2

ヘルペスウイルス科に属するウイルスは、宿主細胞の細胞膜またはエンドソーム膜との膜融合を介して感染を成立させるが、この過程において糖蛋白質群が極めて重要な機能を担っている。1

その中でもグリコプロテインHは、単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バール・ウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)などを含む多くのヘルペスウイルスの間で構造的および機能的に広く保存されている核心的なウイルス蛋白質の一つである。1

多くのヘルペスウイルスにおいて、グリコプロテインHは単体ではなく、同じくエンベロープ上に存在するグリコプロテインLと非共有結合あるいは共有結合によるヘテロ二量体を形成して機能を発揮する特性を持つ。2

このグリコプロテインHとグリコプロテインLの複合体は、さらなる糖蛋白質(例えば単純ヘルペスウイルスにおけるグリコプロテインDやグリコプロテインBなど)とともに融合装置(fusion machinery)を構成し、ウイルス粒子と宿主細胞の生体膜を物理的に近接させて膜融合を引き起こす。1

生化学的および構造生物学的な解析により、グリコプロテインHは膜貫通領域や長い細胞外ドメインを持つI型膜蛋白質であることが示されており、その高次構造やエピトープの配置は中和抗体の標的としても注目されている。2

ヘルペスウイルスの感染経路や宿主特異性の多様性に対応して、グリコプロテインHを含む複合体は細胞表面上の特定の受容体(レセプター)との相互作用を仲介し、ウイルスが細胞質内へ遺伝子を放出するための初期感染ステップを完遂させるために不可欠な因子となっている。1

このように、グリコプロテインHはヘルペスウイルスの増殖サイクルや病原性発現の根幹を担う分子としてウイルス学および分子生物学の分野において詳細な研究が進められており、将来的な抗ウイルス薬やワクチンの開発標的としても重要な意義を有している。1 2

参考文献・出典

  1. ICTV Virus Taxonomy Profile: https://ictv.global/report/chapter/herpesviridae/herpesviridae ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
  2. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201007026725219974 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4