HEALTH WORDS / 用語解説
シス
cis
シスとは、分子生物学や生化学において、同じ分子上や同じ側にある関係性や構造を指す用語であり、ラテン語の「側」を意味する言葉に由来する。1
遺伝学および分子生物学の分野においては、遺伝子発現の調節領域を分類する際によく用いられる概念である。DNA上の特定の配列に対して、物理的に同一のDNA分子(染色体など)上に存在して作用する配列や因子をシスと呼ぶ。代表的なものとして、プロモーターやエンハンサーなどのシス配列(シスエレメント)が挙げられ、これらは同一のDNA鎖上にある遺伝子の転写を調節する機能を持つ。これに対し、別のDNA分子から拡散して作用するタンパク質などの因子はトランスと呼ばれる。
化学構造や立体化学の文脈においては、二重結合や環状構造の同一平面に関して、同じ側に位置する置換基の関係を表す立体配置の用語として使用される。例えば、炭素間の二重結合の両側に同一の基または原子が位置する場合、それらが同一方向にあればシス配置、反対側にあればトランス配置と定義される。このシス-トランス異性体の概念は、生体膜を構成する脂質の性質や、視覚に関与するロドプシンのレチナールの構造変化など、多様な生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たしている。2
参考文献・出典
- 命数辞・接頭辞・化学命名法等に関する情報: https://www.NikkajiJpc.jp/nikkaji/JsrGet.id?ID=1173977598 ↩
- 化学用語辞典: https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakukogyo/71/1/71_42/_pdf ↩