HEALTH WORDS / 用語解説
セリンラセマーゼ
Serine racemase
セリンラセマーゼとは、L-セリンをD-セリンへと変換する酵素、およびその逆反応であるD-セリンからL-セリンへの変換を触媒する酵素である。1
本酵素は、哺乳類の中枢神経系において広く発現しており、特に脳の前頭葉や海馬などの組織に多く存在している。2
生体内で生成されたD-セリンは、グルタミン酸受容体の一種であるNMDA受容体のグリシン結合部位に対する内因性の共作動物質(コアゴニスト)として機能することが知られている。2
NMDA受容体は神経伝達やシナプス可塑性、記憶・学習といった高次脳機能において極めて重要な役割を果たしており、セリンラセマーゼはD-セリンの生合成を介して間接的にこれらの中枢神経機能を調節している。2
分子生物学的な特徴として、セリンラセマーゼはピリドキサールリン酸を補酵素として依存するアイソメラーゼ(異性化酵素)の一種である。1
さらに、本酵素はラセマーゼ活性だけでなく、L-セリンやD-セリンから水分子を脱離させる脱水酵素としての活性もあわせ持つことが明らかにされている。2
この脱水反応によってピルビン酸とアンモニアが生成されるため、セリンラセマーゼはアミノ酸の代謝経路においても一定の寄与をしていると考えられている。2
基礎医学および精神医学の領域において、セリンラセマーゼおよびD-セリンの代謝異常は、統合失調症などの精神疾患の病態生理や神経変性疾患における神経細胞死との関連が示唆されており、創薬の標的分子としても注目を集めている。2