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HEALTH WORDS / 用語解説

タイサブリ

Tysabri

タイサブリとは、一般名をナタリズマブとする、遺伝子組換え技術を用いて製造されたヒト化モノクローナル抗体であり、主として多発性硬化症などの自己免疫疾患の治療に用いられる免疫抑制剤および生物学的製剤である。1

タイサブリの有効成分であるナタリズマブは、インテグリンの一種であるVLA-4(非常に遅い抗原-4)に対する抗体として機能する。2

多発性硬化症の病態においては、活性化された免疫細胞が血液脳関門を通過して中枢神経系へ侵入し、ミエリン鞘に対して炎症や脱髄を引き起こすことが知られている。3

タイサブリは、免疫細胞の表面に発現するVLA-4に特異的に結合することで、血管内皮細胞表面に存在するVCAM-1との結合を競合的に阻害する。2

この結合阻害作用により、免疫細胞が血液脳関門を通過して脳や脊髄といった中枢神経系へ遊走することが防止され、結果として局所の炎症反応や組織障害が抑制される仕組みとなっている。4

臨床的な投与方法としては、通常、一定の間隔で静脈内へ持続的に点滴静注される注射薬として使用される。1

適応疾患としては、既存の治療薬では十分な効果が得られない再発寛解型多発性硬化症の治療や、活動性の高いクローン病などの消化器系自己免疫疾患に対して使用されることがある。2

一方で、強力な免疫抑制作用を有するがゆえに、いくつかの重大な副作用に関する注意が必要とされる。1

特に重大なリスクとして、日和見感染症の一つである進行性多巣性白質脳症の発症が挙げられる。5

進行性多巣性白質脳症は、JCウイルスの再活性化を主な原因とし、中枢神経系の白質に広範な脱髄病変を形成する致死性の高い脳炎である。6

タイサブリの投与を受ける患者においては、この進行性多巣性白質脳症の発症リスクを評価するため、治療開始前や継続中にJCウイルスの抗体検査や定期的なMRI検査などによる画像診断が厳重に行われる。5

さらに、感染症に対する防御機能が低下することから、重篤な日和見感染や過敏症、アナフィラキシーなどの副作用に対しても十分な監視体制が求められる。1

このようにタイサブリは、免疫系の特定の分子経路を標的とすることで優れた抗炎症作用を発揮する一方で、安全性の管理において高度な専門知識と慎重な臨床管理が要求される医薬品である。4

参考文献・出典

  1. 医薬品医療機器総合機構 添付文書情報: https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/6250400F1023_1_03/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
  2. KEGG DRUG: ナタリズマブ: https://www.kegg.jp/entry/D03889 ↩1 ↩2 ↩3
  3. 国立精神・神経医療研究センター 難波情報センター: https://www.nanbyou.or.jp/entry/457 ↩
  4. 医薬品医療機器総合機構 審査報告書: https://www.pmda.go.jp/drugs/2014/P201400035/620436000_22600AMX00650_S01的.pdf ↩1 ↩2
  5. 医薬品医療機器総合機構 医薬品安全対策情報: https://www.pmda.go.jp/files/000153835.pdf ↩1 ↩2
  6. 国立感染症研究所 IASR: https://www.niid.go.jp/niid/ja/all-articles/surveillance/2290-iasr/related-articles/related-articles-4366.html ↩