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HEALTH WORDS / 用語解説

ヒートショックプロテイン

Heat Shock Protein

ヒートショックプロテイン(HSP)とは、細胞が熱などのストレスにさらされた際に発現が誘導される一連のタンパク質の総称であり、生体のストレス応答において重要な役割を果たす分子シャペロンとして機能する。1

ヒートショックプロテインは1962年にショウジョウバエの唾液腺染色体を用いた実験において、予期せぬ熱ショックによって特定のパフレット(パフ)が形成され、未知のタンパク質群が急速に合成される現象として初めて発見された。2

その後、熱だけでなく活性酸素、重金属、紫外線、虚血、炎症など、様々な物理的あるいは化学的ストレスによっても同様に誘導されることが明らかとなり、現在ではストレス蛋白という概念としても広く認知されている。1

生体内でヒートショックプロテインは、アミノ酸配列から正しい立体構造へと折り畳まれる過程にある nascent chain (新生鎖)や、ストレスによって変性しかけたタンパク質と結合する。3

これにより、タンパク質同士の異常な凝集を防ぎ、正常な高次構造への形成や維持、あるいは修復を助ける分子シャペロンとしての主要な機能を発揮する。3

もし修復が不可能なほど構造が破壊されてしまったタンパク質に対しては、ユビキチン・プロテアソーム系などのタンパク質分解酵素へ誘導し、細胞内から速やかに排除する品質管理システムの一翼も担っている。3

ヒートショックプロテインは、その分子量の大きさや機能的な特徴に基づいていくつかのファミリーに分類されており、主要なものとしてHSP110、HSP90、HSP70、HSP60、および低分子量ヒートショックプロテイン(sHsp)などが知られている。3

中でもHSP70やHSP90は細胞生物学や医学の領域において集中的に研究されており、アポトーシスの抑制や免疫応答の調節、さらにはシグナル伝達の制御など、多様な生命維持活動に関与していることが示されている。2

臨床医学やリハビリテーション医学の分野においては、温熱療法(ハイパーサーミア)などによって身体に適度な熱ストレスを加えることで、組織内のヒートショックプロテインの発現を高め、虚血再灌流障害や炎症から細胞を保護する生体防御メカニズムの応用が期待されている。1

また、悪性腫瘍(がん)の増殖や薬剤耐性、あるいは神経変性疾患における異常タンパク質の蓄積との深い関わりも指摘されており、創薬の標的分子としても大きな注目を集めている。2

参考文献・出典

  1. 厚生労働省 e-ヘルスネット: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-034.html ↩1 ↩2 ↩3
  2. J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/49/6/49_548/_pdf ↩1 ↩2 ↩3
  3. J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/55/2/55_091/_pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4