HEALTH WORDS / 用語解説
ショック蛋白
Shock protein
ショック蛋白とは、熱や毒物、虚血などの様々なストレスに応答して細胞内で急速に生合成が誘導されるタンパク質群の総称であり、一般には熱ショック蛋白(ヒートショックプロテイン)と同義として扱われることが多い。1
ショック蛋白は、生物が環境からのストレスに適応し細胞を保護するために極めて重要な役割を果たしており、進化の過程において細菌からヒトに至るまで高度に保存されている。1
細胞が温度上昇などの物理化学的ストレスにさらされると、タンパク質の高次構造が変性したり凝集したりする障害が発生する。1
このような異常な状態において、多くのショック蛋白は分子シャペロンとして機能し、変性したタンパク質に結合してその正しい折り畳み(フォールディング)を助けたり、凝集を未然に防いだり、修復不能なタンパク質を分解へと導いたりする。1
ショック蛋白はその分子量や機能的特徴に基づいていくつかのファミリーに分類されており、代表的なものとしてHsp90、Hsp70、Hsp60、Hsp40、および低分子量熱ショック蛋白などが知られている。1
これらのタンパク質の多くは、ストレスがない正常な生理的条件下においても細胞内に一定量が常時発現しており、新しく合成されたタンパク質の構造形成や細胞内局在の制御など、通常の細胞代謝や恒常性(ホメオスタシス)の維持に不可欠なハウスキーピング遺伝子としての役割も担っている。1
医学や生物学の分野においては、ショック蛋白の発現誘導メカニズムや疾患との関連について盛んに研究が行われている。2
例えば、虚血性心疾患や脳虚血などの病態において、あらかじめ軽度のストレスを負荷してショック蛋白の発現を高めておくことで、その後の深刻な虚血障害から細胞や組織が保護されるプレコンディショニングという現象が広く知られている。2
また、悪性腫瘍(がん)の細胞においては、高頻度でショック蛋白が高発現しており、がん細胞の生存、増殖、およびアポトーシスからの回避に寄与していることが示されているため、分子標的薬を用いた抗がん剤の開発ターゲットとしても注目を集めている。2
さらに、免疫学の領域では、細胞外に放出されたショック蛋白が免疫担当細胞の受容体に結合し、サイトカインの産生を促すなど免疫応答や炎症の調節においてシグナル伝達分子として働くことも明らかにされている。2