ホームプロモーター領域

HEALTH WORDS / 用語解説

プロモーター領域

Promoter region

プロモーター領域とは、DNA上においてRNAポリメラーゼが特異的に結合し、転写を開始させるための塩基配列のことである。1 通常、遺伝子の上流、すなわち転写開始点の5'側近傍に位置しており、遺伝子発現の転写制御において中心的な役割を担う領域である。2

真核生物および原核生物のいずれにおいても、プロモーター領域は遺伝子がいつ、どこで、どの程度の量で転写されるかを決定するための重要な塩基配列を含んでいる。1 原核生物である細菌などでは、RNAポリメラーゼが直接プロモーター領域を認識して結合するが、真核生物の場合はより複雑な制御メカニズムが存在する。3

真核生物のプロモーター領域は、転写開始点のすぐ上流に位置するコアプロモーターと、さらに上流に位置する上流プロモーター要素やエンハンサーなどの調節領域から構成されていることが多い。3 コアプロモーター内には、TATAボックスと呼ばれる特異的な塩基配列が含まれていることが多く、これが転写因子やRNAポリメラーゼIIなどのタンパク質を引き付ける目印として機能する。3

プロモーター領域には、転写因子と呼ばれる特定のタンパク質が結合するための結合部位が無数に存在する。2 活性化因子やリプレッサーといった転写因子がこれらの部位に結合することによって、RNAポリメラーゼによる転写の開始が促進されたり、逆に抑制されたりする調節を受ける。3 このようにして、細胞は環境の変化や発生段階に応じて必要なタンパク質を適切なタイミングで合成することができる。1

分子生物学や遺伝子工学の分野においては、目的の遺伝子を効率よく発現させるためのベクター構築において、プロモーター領域の選択が極めて重要な要素となる。2 強力なプロモーターを用いることで、宿主細胞内で大量の目的タンパク質を生産させることが可能となり、医薬品の製造や基礎研究において広く応用されている。3 また、プロモーター領域における塩基配列の変異やDNAのメチル化などのエピジェネティックな修飾は、遺伝子発現の異常を引き起こし、癌をはじめとする様々な疾患の発症に関与することが知られている。1

参考文献・出典

  1. NHGRI Genome.gov: https://www.genome.gov/genetics-glossary/Promoter ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
  2. 国立情報学研究所 学術成果ポータル CiNii Research: https://ci.nii.ac.jp/naid/110002360590 ↩1 ↩2 ↩3
  3. National Center for Biotechnology Information Bookshelf: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK9886/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5