HEALTH WORDS / 用語解説
ホスホイノシチド
Phosphoinositide
ホスホイノシチドとは、細胞膜の構成成分であるリン脂質の一種であり、イノシトールリン脂質とも呼ばれるグリセロリン脂質の総称である。1 イノシトールの水酸基がリン酸によってリン酸化された構造を基本骨格として持っており、細胞内におけるシグナル伝達、膜交通、細胞骨格の制御など、多様な生命活動において極めて重要な役割を果たしている。1
ホスホイノシチドの基本構造は、脂肪酸が結合したグリセロール骨格にリン酸を介してイノシトールが結合したホスファチジルイノシトール(PI)である。2 イノシトール環には3位、4位、5位という複数のリン酸化を受ける部位が存在しており、これらの位置がキナーゼやホスファターゼといった酵素によって特異的にリン酸化あるいは脱リン酸化されることで、様々な種類のホスホイノシチド誘導体が生成される。3
イノシトール環のリン酸化の状態の違いにより、ホスホイノシチドにはホスファチジルイノシトール3-リン酸(PI(3)P)、ホスファチジルイノシトール4-リン酸(PI(4)P)、ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(PI(4,5)P2)、ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸(PIP3)などの多様な分子種が存在している。3 これらの多様な誘導体はそれぞれの細胞内小器官の生体膜に局在しており、膜のアイデンティティを維持する目印としても機能している。3
例えば、ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(PI(4,5)P2)は形質膜に多く存在し、ホスホリパーゼCなどの酵素によって切断されることでイノシトール三リン酸(IP3)とジアシルグリセロールを生成し、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇やプロテインキナーゼCの活性化を伴うシグナル伝達経路を起動する。1 また、ホスファチジルイノシトール3-リン酸(PI(3)P)は主としてエンドソームやオートファソームなどの膜交通に関与する小器官の膜に特異的に存在し、標的となるタンパク質を膜上にリクルートするために重要な役割を果たしている。3
このように、ホスホイノシチドの代謝異常やリン酸化・脱リン酸化のバランスの破綻は、がんの進展、神経変性疾患、免疫異常など、多くのヒト疾患の発症や病態形成に深く関わっていることが明らかにされている。3
参考文献・出典
- J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907038148943793 ↩1 ↩2 ↩3
- J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201307026771891967 ↩
- ライフサイエンス 新着論文レビュー: https://doi.org/10.7875/first.2016.085 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5