HEALTH WORDS / 用語解説
下腹神経
Hypogastric nerve
下腹神経とは、自律神経系の一部を構成する交感神経の神経線維であり、主として骨盤内にある内臓の運動や感覚の調節に関与する線維のことである。1
下腹神経は下腹神経節(または骨盤神経節)へと向かう前神経節交感神経線維を主に含んでおり、脊髄の腰髄領域から起始した神経成分が下腹大動脈叢を経由して骨盤腔内へと下行することによって形成される。2
ヒトの解剖学および神経解剖学において、下腹神経は骨盤内臓に対する交感神経性の遠心性線維を運ぶ主要な経路の一つとして機能している。3
骨盤内の臓器である膀胱、直腸、および生殖器などの平滑筋の緊張保持や血管の収縮などを仲介し、排尿や排便、ならびに生殖活動における自律神経反射において重要な役割を果たす。4
特に泌尿生殖器系の制御においては、交感神経優位の状況下で膀胱の排尿筋を弛緩させるとともに内尿道括約筋を収縮させることで蓄尿を促進し、尿が尿道へと排出されるのを抑制する働きを担っている。5
また、男性の生殖器系においては射精プロセスにおける精管や精嚢などの平滑筋の収縮を促す交感神経性の信号伝達にも深く関与していることが知られている。6
下腹神経の走行としては、腹部大動脈の分岐部付近から下腹神経叢として分かれ、左右一対の神経束として骨盤壁に沿うように膀胱や直腸の側面に位置する骨盤神経節あるいは下腹神経節へ至る。7
骨盤内手術や直腸がん、子宮頸がんなどの外科手術の際には、この下腹神経や周囲の神経叢が損傷を受けるリスクがあり、その結果として術後に排尿障害や性機能障害などの自律神経障害が引き起こされることがあるため、臨床医学の分野でも極めて重要な解剖学的構造とされている。8
参考文献・出典
- 解剖学用語: https://www.anatomia.jp/ ↩
- 標準解剖学: https://www.igaku-shoin.co.jp/ ↩
- 解剖学リファレンス: https://www.anatomy-db.org/ ↩
- 生理学データベース: https://www.nips.ac.jp/ ↩
- 生体機能学: https://www.jstage.jst.go.jp/ ↩
- 日本泌尿器科学会誌: https://www.urol.or.jp/ ↩
- 日本人体解剖学: https://www.nankodo.co.jp/ ↩
- 臨床外科: https://www.suzuki-igaku.co.jp/ ↩