HEALTH WORDS / 用語解説
外リンパ
perilymph
外リンパとは、内耳の骨迷路と膜迷路の間に満たされている液体の総称である。1
内耳は側頭骨の錐体内部に複雑な構造を持つ迷路を形成しており、その全体が外側の硬い骨迷路と、その内側にある膜状の膜迷路に大別される。2 骨迷路と膜迷路の間隙である外リンパ腔には外リンパが循環しており、内耳の空間的な支持と代謝の維持に寄与している。3
外リンパは血漿や脳脊髄液に類似した電解質組成を持つことが特徴であり、特にナトリウムイオン(Na⁺)を高濃度に含み、カリウムイオン(K⁺)を低濃度に含むという細胞外液的な性質を示している。4 これに対して、膜迷路の内部を満たす内リンパはカリウムイオンを高濃度に含む特殊な組成を持つため、外リンパと内リンパの間には明確なイオン組成の違いが存在する。5
蝸牛内においては、外リンパは前庭階および鼓室階という二つの大きな管腔を満たしている。6 音波が耳小骨を介して卵円窓に伝えられると、前庭階の外リンパが最初に振動し、その圧力波が基底膜を揺らすことによって聴覚の受容器であるコルチ器が刺激される。7 外リンパを伝わった圧力は蝸牛窓(正円窓)へと逃れる仕組みになっており、この一連の液振動が音の受容における重要な物理的過程を担っている。8
また、外リンパは前庭系の平衡感覚器官においても重要な役割を果たしており、半規管や前庭(球形嚢および卵形嚢)の周囲を取り巻くことで頭部の加速度や回転運動に伴う内耳の平衡受容器の機能を支えている。9
臨床医学においては、外リンパが何らかの原因によって中耳へと漏出する外リンパ瘻という病態が知られている。10 外リンパ瘻が生じると、内耳圧の変動や内耳機能の障害により、突発的な難聴、めまい、耳鳴りなどの症状が引き起こされることがある。11 このように、外リンパは感覚器としての聴覚および平衡覚の正常な作動を担保するために不可欠な生体内部環境を構成している。12
参考文献・出典
- e-ヘルスネット: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/teeth/yk-060.html ↩
- 解剖学講義: https://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r1/anatomy.html ↩
- 慶應義塾大学医学部 発生と分化: http://www.sc.itc.keio.ac.jp/anatomy2/lectures.html ↩
- 日本生化学会: https://www.jbs.or.jp/fi_seika/bk_100/100vol4no4.pdf ↩
- 生理学テキスト: https://www.fujita-hu.ac.jp/~physiology/text.html ↩
- 音声言語医学: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslhr1960/32/3/32_3_173/_pdf/-char/ja ↩
- 日本生理学会: https://physiol.jp/index.html ↩
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会: https://www.jibika.or.jp/citizens/oto/mimino_kozo.html ↩
- 日本平衡神経科学会: https://www.equilibrium-research.com/about/index.html ↩
- 難聴に関する調査研究班: https://www.nanbyou.or.jp/entry/4180 ↩
- 厚生労働省難治性疾患政策研究班: https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/13309 ↩
- 日本医史学会: https://jshs.org/ ↩