HEALTH WORDS / 用語解説
深頸筋膜
Deep cervical fascia
深頸筋膜とは、頸部の深部において筋肉、血管、神経、気管、食道などの器官を包み込み、それらの位置を保持し保護する結合組織の膜である12。
深頸筋膜は、一般的に浅層(浅葉)、中層(中葉・気管前葉)、深層(深葉・椎前葉)の3つの主要な層に大別され、さらに頸動脈鞘を形成して頸部の構造物を複雑かつ緻密に支えている13。
最浅層に位置する浅葉は僧帽筋や胸鎖乳突筋といった頸部の大きな筋肉を取り囲んでおり、上方では下顎骨の下縁や項線に付着し、下方では鎖骨や胸骨に移行している14。
中層である気管前葉は舌骨の下方に存在し、甲状腺、喉頭、気管、咽頭、食道などの内臓系器官を包み込んでいる12。
最深層にあたる椎前葉は脊柱起立筋や斜角筋などの椎前筋および脊柱を覆うように存在し、頭蓋底から胸郭上部にかけて連続している14。
また、これら各層の筋膜が連続して作り出す頸動脈鞘の内部には、総頸動脈、内頸静脈、および迷走神経が走行しており、頸部の重要血管や神経を物理的な衝撃から保護している13。
深頸筋膜の間には間隙(層間隙)と呼ばれる結合組織の潜在性腔所が存在し、代表的なものとして気管前間隙、咽頭後間隙、危険間隙などが挙げられる12。
これらの間隙は解剖学的に頭蓋底から縦隔へと連続しているため、頸部に生じた感染症や膿瘍が深頸筋膜の隙間を通って胸腔内へと広がり、重篤な縦隔炎を引き起こす原因経路となり得る臨床的な重要性を持っている14。